2021-02-06

アップルや百度などハイテク企業の自動車参入観測

「ついにこのときが来たか」と自動車メーカー関係者は呟く。かねてより噂されていた米アップルの自動車業界参入が現実味を帯び始めたからだ。

 韓国の現代自動車がアップルと電気自動車(EV)の受託生産に関しての交渉を始めた。今のところ「アップルは世界の自動車メーカー数社と協議を進めており、現在の交渉は初期段階であって何も決定したことはない」と現代側はコメントを出しているが、ハイテク企業の自動車参入の衝撃は大きい。

 他にも中国・百度が中国の自動車メーカー・浙江吉利控股集団と共同で自動運転のEVを製造すると発表。台湾の鴻海精密工業も浙江吉
利と自動車メーカー向けの受託製造を行うことで提携したと発表し、ソニーもEV試作車を使ってオーストリアで行動走行を始めている。

 ハイテク企業の自動車参入は既存の産業秩序を変える可能性を浴びる。これまで自動車業界は自動車メーカーがトップに立ち、部品を供給するサプライヤーを従えてきた。この構図が「根本から崩れる恐れがある」(関係者)からだ。

 従来の自動車産業秩序の舞台はガソリン車。ガソリンでは高度なすり合わせ技術が必要だったが、これがEVになると勝手が変わる。3万点の部品を擁するガソリン車とは異なり、EVはその4割で済むだけに、「組み立てが容易になる」(同)のだ。

 その結果、ブランド力や画期的なクルマを作る能力を持つ企画力の高いプレーヤーが頂点に立つことになるため、企画力で劣る自動車メーカーはその下に位置する。「ハイテク企業が企画・開発したスマホを受託製造会社に製造させる流れが自動車業界でも起きかねない」(同)というわけだ。

 トヨタ自動車の関係者は「安全性はハードのノウハウを積み重ねた企業の強み。安全面などで、どれだけ作り込まれた製品が出てくるか注視している」と危機感を募らせる。

 そのトヨタも時価総額でEV専業の米テスラに約3倍もの差を付けられているのは事実。いち早く中国やテスラがEV化の流れを作り出しているのに対し、「トヨタが次世代車の流れに乗り遅れていないか」といった指摘もある。

 EVが普及すれば、クルマがプラットフォームと捉えられ、アプリ利用などの付随サービスで稼ぐ一機器になりかねない。ハイテク企業の自動車参入は日系メーカーに大きな構造変革を迫ることを意味している。

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