2021-02-08

【EⅤ化の流れで自動車産業も大転換】燃料電池で、TOTO、日本ガイシ、ノリタケカンパニーリミテドの森村グループ4社で会社を設立 内燃機関依存からの脱却へーー 業績好調の中、事業構造改革進める日本特殊陶業の〝アジャイル〟経営

2019年3月4日、森村グループ4社で会見。写真左から、ノリタケカンパニーリ ミテド社長・加藤博氏、TOTO会長・喜多村円氏(当時社長)、日本ガイシ 社長・大島卓氏、日本特殊陶業会長・尾堂真一氏(当時社長)。日本特殊 陶業は会長の尾堂氏が経営、社長の川合氏が執行を担う体制を執っている


燃料電池の主要部材を開発

「セラミックの粉を微妙な配合で混ぜて特長を出すことやセラミックスに電極を付け、ガスを吸着させて検出するセンシングなどが得意」─。川合氏は自社の強みとする技術をこう語る。

これらの技術から生まれたのが「水質IoTシステム」。ガス成分のセンシングで水質を見える化、IoTでデータを解析し「陸上養殖の水質を管理して歩留まりを上げるシステム」だ。

また、「これから広げていく事業領域はIoTなどのエッジ(端)になるセンシングやセラミックスの特徴を活かした耐熱性、信頼性が必要な部品」。

その1つとして期待するのが、熱を発する5Gや6Gなど通信向けのアンテナモジュール。「安定的に特性を維持できる部材の開発」を進めている。

世界中に拠点を築いた自動車関連部品の販売網の活用も視野に入れる。「消費者に何かを届けるサービスや部品の交換時期を顧客に知らせるシステムなど販売網を使ったサービス事業にも広げていきたい」と事業の可能性を語る。 

30年に新規事業だけで売上高1000億円を目指し、様々な領域を模索している日本特殊陶業だが、中でも特に注力しているのが燃料電池だ。

燃料電池は空気中の〝酸素〟と〝水素〟を化学反応させて電気を発生させる発電装置。

電気をつくる際、熱と水が発生し、お湯も供給できるため、クリーンで利便性の高い発電装置として注目されている。

燃料電池は使用する電解質によって4つに分けられるが、日本特殊陶業は発電効率が40~60%と最も高いジルコニア系セラミックス等を使用した固体酸化物形燃料電池(SOFC)の主要部材「スタック」を手掛けている。

SOFCの開発は1999年から開始。スパークプラグや車載用酸素センサ、半導体パッケージの製造技術で培った「積層技術」や「金属とセラミックスの接合技術」が活用されている。

この事業を軌道に乗せるため、大きな一歩も踏み出した。

「これから構築される水素社会のインフラ事業になるため、いかに早く市場価値に合うものを提供できるかが重要。そこでTOTOさん、日本ガイシさん、ノリタケカンパニーリミテドと当社の4社で、ノウハウを共有しながら、より良いものを届けていこうと」

日本特殊陶業のルーツは、1876年創業の森村組。1904年に陶器メーカーの「日本陶器(現ノリタケカンパニーリミテド)」が設立されると、1917年に衛生陶器の「東洋陶器(現TOTO)」、1919年には碍子部門の「日本碍子(現日本ガイシ)」が誕生。「日本特殊陶業」は日本ガイシのスパークプラグ部門を分離して、1936年に設立された会社だ。

その森村グループが100年近くぶりに集結、2019年8月『森村SOFCテクノロジー』を設立した。

SOFCの主要部材のセルスタックは日本特殊陶業の製品のため、出資比率は日本特殊陶業が67%、モジュール周りに強みを持つTOTOが20%、日本ガイシが8%、ノリタケカンパニーリミテドが5%となっている。

また、2020年1月には三菱パワーとの合弁会社『CECYLLS』を設立。

森村SOFCが手掛けるのはシステムをコンパクトにできる板状のセルを使った「平板セルスタック」で、コンビニやスーパーなど業務用から市場を開拓し、家庭用へも広げる狙い。

一方のCECYLLSが手掛けるのは大型の「円筒セルスタック」でビルや工場、発電所などの産業用途。

「三菱パワーさんは電力会社や発電所が顧客になるので、産業用など大きなところはCECYLLS、家庭用や業務用など比較的小さなところを森村SOFCが手掛け、産業用から業務用までカバーする」形だ。

経済がグローバル化し、競争も国内ではなく世界での生き残りが問われる中、NTTがNTTドコモを完全子会社化する動きも出ている。ルーツが同じ森村グループが集結し、新たな価値提供で、世界での存在感向上にも期待がかかる。

日本酸素HDはなぜ、グローバル競争に勝ち抜けたのか?

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