2021-02-12

菅政権の金融政策を占う日銀次期審議委員に「リフレ派」

菅義偉政権が日銀の金融政策決定会合のメンバーである審議委員に専修大経済学部教授の野口旭氏(63歳)を充てる人事案を国会に提示した(2月10日に承認)。3月末に任期満了となる櫻井眞氏の後任。

 櫻井氏は安倍晋三前首相のリフレ派(積極的に金融緩和や財政出動を主張する)人脈の後押しで起用された経緯がある。後任人事は菅首相の日銀の金融政策に対するスタンスを占う上で注目されていた。安倍前政権下で決定会合のメンバー構成がリフレ派に偏ったため、日銀や財務省内では産業界出身者やリフレ派色の薄い中立的な学者らの起用を期待する向きがあった。

 だが、フタを開ければ、櫻井氏をしのぐ「筋金入りのリフレ派」(日銀幹部)の野口氏が起用され、日銀内外に波紋を広げている。新型コロナウイルス禍が続く中「菅首相が黒田東彦総裁に『緩和の手を決して緩めるな』と迫る無言のメッセージ」(官邸筋)とも言え、黒田日銀が進める「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の政策効果の点検にも影響を及ぼすのは必至だ。

 野口氏は、リフレ派の理論的支柱である日銀前副総裁の岩田規久男氏(学習院大学名誉教授)が主導する経済学者の集まり「昭和金融恐慌研究会」の有力メンバー。研究会には副総裁の若田部昌澄氏(元早大教授)や審議委員の安達誠司氏(元丸三証券経済調査部長)、元審議委員の原田泰氏(名古屋商科大学ビジネススクール教授)ら日銀入りしたリフレ派が名を連ねている。

 野口氏はかねてから「デフレ脱却には大規模な金融緩和と財政出動のポリシーミックスが不可欠」と主張。近年は内閣官房参与の髙橋洋一氏とともに自民党金融調査会の現代貨幣理論(MMT)勉強会の講師にも招かれており、その財政拡張主義的な主張を財務省も警戒する。

 今後は6月に任期が切れる政井貴子氏の後任も焦点。菅首相のリフレ重視の姿勢が鮮明になったことで、黒田総裁は「引き締め的と受け止められる政策修正は打ち出しづらくなった」(企画局筋)と見られ、政策運営の裁量が狭まった。

 ETF(上場投資信託)買い入れ抑制などの手が打ちづらくなったとの声も出ている。

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