2023-03-23

【母の教え】ポピンズ社長・轟麻衣子さん《ベビーシッター・介護大手》

轟麻衣子・ポピンズ社長

一人娘に海外留学を提案



 母がよく言っていたのは「あなたはあなたらしく。だから、人と同じことをしなくてもいいのよ」ということです。この言葉に、わたしは何度も背中を押されました。

 後は「あなただったらできる」という言葉ですかね。母は根拠なき自信というか、わたしの肯定感のようなものをすごく引き出してくれました。

 この他、「人に感謝を忘れないで」とか「笑顔を大切に」という言葉もよくかけられました。

 母はよく、わたしにごめんねと。あなたをもうちょっと美人に生んであげられていたら、そこに立っているだけで華やかになるのに、それが難しかったからチャーミングでいなさいと(笑)。笑顔を大切にしなさいとずっと言われていたせいか、わたしは小学校の習字で何度も「笑顔」と書いたことをまだ覚えています。

 母は自分が子供の頃、ずっと留学をしたいと思っていたようで、自分が行かなかったこともあり、わたしが小学5年生くらいの時に海外留学の話を持ってきました。強く推薦してきたというよりも、その時、母はイギリスのお城のような学校の写真を見せてきて、このまま、あなたは普通に日本の中学校へ進学するのか、それとも、海外へ出て、世界を知るのかと。

 今から30年近く前の話ですが、母はわたしに語学を習得することや世界を知り、多様性のある中で育っていくことが大切なのだということを教えたかったようです。わたしは母のプレゼンに魅了され、こんな貴族の館のような場所で勉強できるなら楽しいかなと軽い気持ちで考え、英語も何も話せないまま英国に飛び立ってしまいました。

 それこそ若気の至りというのかもしれませんが、イギリスへ行くことを決めたのは、母がずっと言い続けてきた「あなたは人と同じことはしなくていい。あなただったらできる」という言葉が、わたしの大きな軸になっていたのだと思います。

 もう一つ、覚えているのは、「あなたにはいつでも帰る場所がある」ということ。ダメだったらすぐに帰って来ればいいんだから、他の環境で頑張ってチャレンジしてみたら? という感じでしたから、わたしも気軽な気持ちで渡英しました。

 結局、行ってから2年間くらいは毎日泣いていましたし、苦労も沢山しました(笑)。周りには日本人は一人もいないし、外に出て、初めて母の有難さを感じました。当初はわたしも辛かったですが、一人娘を送り出すのですから、母も辛かったのではないかと思います。

 実は当時、母は周りの人たちから「育児放棄をしているのか」とか、「鬼のようだ」と言われたそうです。現在は、わたしが母になり、12歳と10歳の子供がいます。ちょうどわたしが留学を決断した頃で、自分の幼い子供たちを見ていると、当時の母はどんな気持ちでわたしを送り出したのだろうかと非常に感慨深いものがありますね。

続きは本誌で

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事