2021-02-16

元防衛大臣・森本敏に直撃! バイデン政権誕生で世界秩序はどう変わる?

森本 敏 元防衛大臣・拓殖大学総長

「バイデン政権を構成する担当者には大きく分けて三つの特色がある」と指摘する森本氏。それは多様性、実務経験、議会との微妙なバランスということ。多様性があるが故に、政策上の調整という問題を抱えているわけだが、同時にこれは日本にも関わってくる問題。一方、「日本にとってこれからの3大テーマは、新型コロナウイルスとデジタル、グリーン」と語る森本氏。日本はバイデン政権とどう向き合うのか。そして日本の役割とは何か─―。(「財界」2月24日号から)


政権内や議会で意見が割れると政権推進が困難に



 ── まずは米バイデン政権の発足にあたっての受け止めからお話してもらえますか。

 森本 バイデン政権には大きく分けて三つの特色があると思います。

 第一に、人事において、非常に多様性が発揮されている。米国では政権が変わると、政治任命者が1千人ぐらい入れ替わるんです。そのうち、すでに100人以上が指名されており、その50%以上が女性です。しかも、マイノリティーと言われるヒスパニック系、アジア系やアフリカ系も含めた非白人層が選ばれていて、多様性に富む政権ということが盛んにいわれています。

 それは、選挙で民主党を支持してくれた人や、いろいろな組織、異なる信条の意見を取り入れるために、幅広く人材を採用したということですが、このことは政府要人がいろいろな利益団体と繋がっており、異なる考え方や政策を調整していかないといけない。要するに、政策の一貫性を確保するための調整が難しいということです。

 ── 多様性があるが故の問題を抱えているわけですね。

 森本 第二は、メンバーのほとんどがオバマ政権当時の実務者です。

 トランプ前政権の発足時のような素人はいなくて、バイデン氏が上院議員時代とオバマ政権下で副大統領だった時の人脈を使って採用している。だから、実務はきちんとできる人ばかりですから、仕事のやり方も実務者に政策立案を任せて、トランプ前政権のようなトップダウン型ではなく、ボトムアップ型になるだろうと思います。

 第三は議会との関係です。定数100の上院で民主、共和両党の勢力は50議席ずつになりました。賛否が同数の場合はハリス副大統領が上院議長として採決するため、民主が上院で事実上の多数派を確保していることになるのですが、民主が一人でも反対したらバランスが崩れてしまうという緊張感があるわけです。

 ── 一人でも造反者が出れば議会で法案や人事の承認が困難になる。そういう意味での緊張感ですね。

 森本 現在のところ、閣僚で正式に承認されたのは、国家情報長官に指名されたヘインズ元米中央情報局(CIA)副長官、黒人初の国防長官となったオースティン元中央軍司令官、財務長官のイエレン前米連邦準備理事会(FRB)議長、ブリンケン国務長官くらいです(編集部注・1月27日時点)。

 例えば、上院の外交委員会、軍事委員会など、それぞれの委員会で承認を受け、それから本会議でも通り、それで初めて承認されるわけです。

 だから、長く時間がかかるわけで、バイデン政権はまだ政策がまとまっていません。特に外交政策については、国務長官が承認された後、副長官、次官、次官補レベルまで決まってから詳細を決めていこうと考えているのでしょう。

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