2021-02-16

元防衛大臣・森本敏に直撃! バイデン政権誕生で世界秩序はどう変わる?(後編)

森本 敏 元防衛大臣・拓殖大学総長

安全保障上のリスクをどう考えるのか



 

 ── 自動車がEV(電気自動車)に置き換わったりして、自動車産業は大変です。

森本 車は全てが電動車になるでしょうし、船や飛行機もこれから開発が進んで、電動化が進むでしょう。ガソリン車がなくなり、電池か液化水素によりモーターで動くようになりますし、発電は石炭やガスを使う火力発電ができなくなるので、いろいろな問題が出てくると思います。

 

ガソリンエンジンがなくなると、自動車産業も構造変化が起こるし、一番厄介なのは、原油の需要が落ちてくる。需要が落ちれば、原油の値段が下がってきます。そうなると、産油国の歳入が維持できない。だから、中東諸国は経済的・政治的に不安定になると思います。

 一番困るのはロシアですね。ロシアは石油や天然ガスが国家歳入源になっているのですから。だから、気候変動問題は、地域の安定という問題にも跳ね返ってきます。

 ── バイデン氏はクリーンエネルギーなどのインフラに4年間で2兆ドル(約220兆円)を投資する計画です。

 森本 米国にはシェールオイルやガスがありますが、これからはイノベーションが進み、太陽光や洋上風力、あるいは原子力や水素燃料などのCO₂を排出しないエネルギーにどんどん転化していくと思います。

 すでに米国政府の公用車300万台をEVなどに切り替えたり、50万基以上の電気自動車用充電ステーションを建設したりする方針です。ただ、新しい技術のイノベーションにどこまで投資できるかということと同時に、エネルギー業界は大きな試練に直面することも予想されますので、ここの補償をどう考えるかという難しい問題を抱えています。

 ── トランプ氏の支持層だった石油・ガス関連の人たちは相当反発していますしね。

 森本 日本や米国で革新的な技術が進めばそれでよいと思いますが、中国の技術革新が進んで、我々の技術が負けることにでもなったら、すでに、一部はそうなっていますが、中国から製品を買わなければならないわけです。

 例えば、自動車がEVに代わったら、部品数が従来の半分ぐらいになってしまう。そうなると、今まで1台300~400万円くらいした車の値段が、100万円くらいまで値下がりして、戦車や装甲車にもその技術が使われる。そうなった時の安全保障上のリスクをどう考えるのかについて、考えざるを得なくなります。


 

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