2021-02-15

Jフロント社長 好本 達也の「店と顧客、テナントをつなぐ唯一無二のプラットフォーマーに」

好本 達也 J.フロント リテイリング社長

「コロナ禍でやるべきことがはっきりした。今までのビジネスモデルは店が開いていることが前提で全ての仕組みが成り立っていた。逆に言えば、店舗が開いていないと何もできないということで、自分たちで時間と空間を限定していた。今後も店舗がビジネスの中心となるが、デジタルを組み合わせて新たな顧客層の開拓を図りたい」

 市場縮小が続く百貨店業界にあって、いち早く"脱百貨店"を標ぼうし、ビジネスモデルの変革を図ってきたJ.フロントリテイリング。2020年5月に社長へ就任したのが好本氏である。

 21年2月期は新型コロナウイルスの影響で、インバウンド(訪日外国人)消費が蒸発。緊急事態宣言が出された昨年4~5月はほぼ全店舗で営業を自粛したこともあり、統合後初の赤字となる見通しだ。

 同社を取り巻く経営環境は厳しいが、20年3月にはパルコを完全子会社化。テナントの賃料で稼ぐ不動産ビジネスを新たな収益事業の柱に育成しようとしている。

 すでに17年に開業した『GINZA SIX』は100%、19年9月に改装オープンした大丸心斎橋店も約3分の2が定期賃貸借によるテナント収入によって成り立っており、安定した収益が見込まれるビジネスモデルを構築。経営に"たら・れば"はないが、新型コロナの影響を受ける前の20年2月期(IFRS)の売上収益営業利益率は8・4%。同業他社に比べて稼ぐ力はついている。

「経験豊かで上質な目を持っている百貨店のお客様に加え、いかにパルコのメインターゲットである若い顧客を掘り起こしていくか。今後も売り場はお客様とわれわれ従業員の心と心を結ぶ大事な拠点。デジタルの力を借りながらも、リアルを基盤とし、店とお客様、そしてテナントをつなぐ唯一無二のプラットフォーマーになりたい」

 入社後は主力の大丸心斎橋店に約20年勤務。その後、札幌店開業や東京店の改装で新店オープンにも携わった経験を持つ。

「開けない夜は無い。希望を失わず努力していく」と語る柔和な表情が印象的だ。

 (「財界」11月18日号)

 

profile

1956年大阪府生まれ。79年慶應義塾大学経済学部卒業後、大丸(現大丸松坂屋百貨店)入社。札幌店開設準備室部長、東京店長などを歴任し、2008年執行役員就任。10年J.フロント リテイリング執行役員、13年4月大丸松坂屋百貨店社長、同年5月J.フロント リテイリング取締役、17年代表執行役常務を経て、20年5月より取締役兼代表執行役社長に就任。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事