2021-02-19

電事連会長(九州電力社長)池辺和弘の「脱炭素の切り札は電化」

池辺 和弘 電気事業連合会会長

「昨年は4月に送配電会社の分社化、6月にエネルギー供給強靭化法成立、10月に政府による2050年カーボンニュートラルを目指す方針表明などあり、非常にエポックメイキングな年になった。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、昨年は台風や豪雨などの自然災害、年末から年始にかけては電力需給がひっ迫するなど、電力供給の責任の重さを改めて感じている」

 全国の大手電力会社でつくる電気事業連合会。これまで会長職は東京・関西・中部の3電力会社が持ち回りで務めてきたが、昨年3月、九州電力から初めてのトップ就任となった。

 今年3月で東京電力福島第1原子力発電所の事故から丸10年が経つ。以来、日本における原発の再稼働は9基に留まり、火力発電の割合が電源全体の8割を占める。一方、世界は脱炭素の流れが加速し、日本も2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す方針。これまでのエネルギー政策は原発の位置づけが曖昧なままだったが、原発がCO2を排出しないゼロエミッション電源であることを踏まえれば、これ以上の思考停止は許されない。

「今なお3万人もの方が福島から避難しているという現状があり、原子力事業に関わる者として大変申し訳なく思っている。ただし、エネルギー資源に乏しい日本においては、電力の安定供給や地球温暖化問題への対応という意味でも、引き続き原子力の果たすべき役割は大きいものと考えており、特定の電源に偏らない供給構造を目指していくべき。今後も地道に原子力の信頼回復に取り組んでいく」

 カーボンニュートラル実現に向けては、再生可能エネルギーの更なる普及や燃焼時にCO2(二酸化炭素)が出ない水素発電やアンモニア発電等のイノベーションは不可決であり、電力業界を取り巻く環境は厳しいが、「われわれの役割は大きい」と前向きだ。

「例えば九州電力のCMでは『答えは、電気にある。』というキャッチフレーズを掲げているが、脱炭素の切り札はエネルギーの電化だ。燃やして利用するガスやガソリンは必ずCO2を排出するが、電気はCO2を排出せずに発電し、利用することができる。個社としても、電力業界としても、脱炭素社会の実現に全力を尽くしてきたい」

 
【プロフィール】

いけべ・かずひろ

1958年2月大分県生まれ。81年東京大学法学部卒業後、九州電力入社。発電本部部長(発電総括)、経営企画本部部長(経営戦略)などを歴任し、2016年執行役員、17年取締役常務執行役員、18年6月代表取締役社長執行役員に就任。20年3月より電気事業連合会会長を務める。

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