「ネットワークサービスの増加により、当社のゲーム事業の収益構造は大きく変化している。巣ごもり需要の継続と『プレイステーション(PS)5』の導入効果により、ユーザーとのエンゲージメントも大変高いレベルを達成できている」
こう語るのは、ソニー副社長兼CFO(最高財務責任者)の十時裕樹氏。
ソニー(吉田憲一郎会長兼社長)が2021年3月期の業績見通しを上方修正。売上高は8兆8000億円(前年同期比6・5%増)、営業利益9400億円(同11・2%増)、純利益は1兆850億円(同86・4%増)となり、2年ぶりに過去最高を更新することになる。純利益が1兆円を超えるのは初めてだ。
業績のけん引役となっているのが、ゲーム&ネットワークサービス部門。コロナ禍の巣ごもり需要を取り込んだことや、昨年11月に発売した家庭用ゲーム機『PS5』の販売が好調。12月末までの2カ月で累計450万台を販売し、760万台という目標達成にも手応えを感じている様子。この他、音楽や金融部門も伸びた。
ソニーの強さは、ゲームやアニメ・映画、半導体、金融など、幅広い事業領域で稼ぐ体制を構築したこと。そして、ハードの売り切りではなく、ソフトなどで継続的に稼ぐ「リカーリングビジネス」と呼ばれるビジネスモデルを確立したことにある。その代表がゲーム部門で、同部門だけで売上高2兆6300億円、営業利益3400億円をたたき出す稼ぎ頭となっている。
ソニーは昨年12月、アニメ専門配信サービスを手掛ける米クランチロールを約1200億円で買収することを発表。同社は200以上の国・地域で9千万人の利用者がおり、新たな顧客の取り込みを急いでいる。
十時氏は「日本アニメに対する関心が海外で急速に高まっている。当社はアニメを注力領域と位置付けており、市場が伸びているところで成長をつくっていきたい」と語る。
今年4月から社名を「ソニーグループ」へと変更し、新たな出発を図るソニー。組織のあり方と共に、事業ポートフォリオの改革にも余念がないようだ。