2023-06-01

民事再生法適用を受けたユニゾHD、融資した地銀に問われる「リスク管理能力」

ユニゾホールディングスが入居する東京都内のビル

今年、最大の倒産案件に─。2023年4月26日、日本の上場企業で初めて、EBO(従業員による買収)で非上場化したユニゾホールディングスが経営破綻した。負債総額は約1260億円。元々は旧日本興業銀行(現みずほ銀行)系の不動産会社だったが、現在金融債権を持っているのは、ほぼ地域金融機関。中には引当や担保で保全できていない債権もある。たびたび危機が囁かれていたユニゾに何か起きたのか。


今年最大の倒産案件に

 2020年の非上場化以降、たびたびその経営状況が危ぶまれていた不動産会社・ユニゾホールディングス(東京都港区)が、2023年4月26日に民事再生法の適用を申請し、経営破綻した(5月9日に東京地裁より民事再生開始決定を受けた)。

 負債総額は1261億9822万円で、帝国データバンクによると今年最大の倒産。4月26日時点で、不動産会社やホテルの再生で実績のある日本産業推進機構(NSSK)グループとスポンサー支援に関する基本合意を締結。今回、民事再生を適用したのは持ち株会社だけで、グループのユニゾ不動産、ユニゾホテルはNSSKの支援の下、営業を継続する予定。

 5月9日には、東京都内で債権者(金融債権者のみで一般債権者は含まれず)を対象とした説明会が開かれた。それ以外にも現在、2者選定された代理人弁護士が債権者への説明に回っており「粛々と進めていく」(代理人弁護士事務所の1者)。

 東京商工リサーチによると、金融関係の債権者は45行(社)で債権額は649億211万円。また、デフォルト(債務不履行)に陥っている社債は総額で610億円。ユニゾHDは、再生手続開始決定日(5月9日)時点における社債権者を正確に把握できた段階で、社債権者に対して説明会を開催したいとしている。

 金融関係の債権者は地域金融機関やJA系の金融機関でメガバンクなど大手は入っていない。大半は担保の設定や引当がされている債権だが、中には北國銀行(約45億円をユニゾHDに融資)や清水銀行(約10億円を融資)、筑邦銀行(約2億円を融資)などで一部の債権が保全されていないケースもあった。

 ユニゾHDの倒産は決してサプライズではない。コロナ禍でホテルの稼働が落ちる中、社債の償還や借入金の返済が危ぶまれるようになり、20年12月には格付けが低下。21年2月には社債を保有する香港のファンドから財務状況に疑義を申し立てられるなど、信用が徐々に低下していたからだ。

 さらには22年に入ってからはスポンサー探しに奔走。複数の候補に当たったが、支援決定には至らず。こうした状況を踏まえると、地銀として、ユニゾHDに対するリスク管理が本当に適切だったのか?という点では疑問が残る。

 また、債権者説明会では、ユニゾHDが現在の状況に陥る要因をつくった非上場化自体に疑問の声が投げかけられた模様。

 非上場化に至る発端となったのは19年7月の旅行大手・エイチ・アイ・エスによる敵対的TOB(株式公開買い付け)。これに対してはフォートレスやブラックストーンなどの米ファンドがホワイトナイト候補として名乗りを挙げた。

 だが、彼らとは条件が合わず、最後はユニゾHDの従業員と、米ファンドのローンスターが共同で設立した会社「チトセア投資」にローンスターが資金を貸し付けて、日本で初めてのEBO(従業員による買収)で非上場化した。

 この時、チトセア投資はローンスターから2000億円超を調達。非上場化後、ユニゾHDはこの借入金の返済を優先し、すでに支払いを終えている。

 また、チトセア投資はローンスターの関連法人に優先株を発行したが、その後プレミアムを付けて買い戻したことも疑問視されている。つまり、事業の継続や債権者の保護以上に、ファンドへの返済を優先した形になっているのだ。これらの理由を明らかにすることは今後、債権者達がユニゾHDの再生計画に同意するかのカギを握る。

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