2023-05-30

新潟を拠点に「大手の飛ぶ路線に飛ぶ!」 トキエア・長谷川政樹の新・地域航空ビジネス

トキエアが使用する仏ATR社製のプロペラ機

14年ぶりに国内で独立系航空会社が新規就航する。新潟を拠点とする「トキエア」だ。東京への人口集中が進行し、国土の0.6%に全国民の3割弱が住む中、地域航空会社としてどのように生き残りを図っていくか。JAL出身の社長・長谷川政樹氏はエアライン初の様々なアイデアで地域活性化や航空業界の課題解決で収益の多角化も図っていく考えだ。

【東京から羽田が直結へ】JR東日本が「羽田空港アクセス線」の本格工事に着手

エアバス系のプロペラ機を活用

「トキエアは〝パスファインダー(開拓者)〟だ。地方と地方を結ぶ路線は競争がなく運賃が高い。航空業界は大企業の常識が当てはめられているが、新たな取り組みで地域の課題や航空業界の課題解決にも貢献したい」

 2009年の静岡空港を拠点とするフジドリームエアラインズ(FDA)以来の独立系航空会社の新規参入が始まる。舞台は新潟県。6月末から就航するトキエア社長の長谷川政樹氏は、こう自社の役割を語る。

 同社は大光銀行や商工中金などの金融機関や福田組、エコー金属といった新潟を地盤とする企業からの出資に加え、新潟県からも融資を受けて20年に設立。23年には日本政策金融公庫から7億円の融資を受けた。

 国内の航空業界を見渡すと、ANAと日本航空(JAL)の2大陣営に加え、スカイマークなどの中堅航空会社、大手傘下の格安航空会社(LCC)が鎬を削っており、新たに参入する〝隙間〟はないように見える。しかし長谷川氏は「新潟を拠点に需要を開拓して地域を磨く」と語り、新たなビジネスモデルを掲げての参入を強調する。

 トキエアが使用する機材はエアバス系の仏ATR社製のプロペラ機。72人乗りと48人乗りの2機体制でスタートし、最大4機体制にする。航空会社の利益構造のポイントは、いかに客席を埋めるかにかかっている。小さい機材であればなおさらだ。そこで同社は知恵を出した。

 ATR社の機材は座席スペースを貨物スペースに切り替え、貨物も運べるようにしたのだ。一晩で変更が可能なため、旅客の需要が低いときには貨物の需要を捉えられる。この「カーゴフレックス」は国内初だ。

 また、プロペラ機ならではの特徴も生かす。就航路線としては新潟を拠点に北海道の札幌丘珠空港、仙台空港、佐渡空港を計画しており、その後は東京、中部、関西への就航を視野に入れる。長谷川氏が見据えるのは移動距離が75~80分の距離だ。

「ジェット機の場合、着陸する際にスピードを落とすため、空港上空を旋回してから着陸する。それだけ時間が余分にかかっているが、そのスピードはプロペラ機とほとんど変わらない」。その境目となる時間が75~80分なのだ。

 またFDAが大手の飛ばない路線を飛ぶことに対し、トキエアは「既に大手が飛んでいる路線を飛ぶ」(同氏)という。ただし、大手の路線と丸かぶりではない。前述したように北海道は新千歳空港ではなく丘珠空港に就航する。つまり「大手が就航する路線は需要が大きいが、大手だけでは賄えない需要を取り込む」というのが狙いだ。関西への就航も伊丹空港ではなく神戸空港を選び、中部も中部国際空港への定期便を計画する。

 またもう1つの就航路線の目安としているのが高速バスだ。長谷川氏によると「新潟と仙台を結ぶ高速バスは1日8往復。(移動時間が)4時間レベルなら勝機がある」。座席数が少ない分、人は多く運べないかもしれませんが、逆に言えば満席にする確率は大きな機材より高くなる。


Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事