2021-02-24

ルネサスエレクトロニクスが6千億円超で米半導体設計会社を買収へ

柴田英利・ルネサスエレクトロニクス社長

半導体メーカー大手のルネサスエレクトロニクスが、英半導体設計メーカーのダイアログ社の買収を決めた。電源制御ICが主力で、米アップルを顧客に持つダイアログを傘下に収めることで、自動車領域以外への事業拡大を急ぐ。買収金額は6千億円規模。2017年以降では3度目の大型買収になる。

「製品ポートフォリオの中で不足感が強いものを中心に、強化を図ってきた。相互補完性をいくつも持った組み合わせ」

 こう語るのは、ルネサスエレクトロニクス社長の柴田英利氏。

 半導体業界で買収は今や業界の王道だ。5G(次世代通信規格)やAI(人工知能)、EV(電気自動車)、自動運転、ビデオゲームなど成長産業の中核技術として欠かせないものの、自社開発では追いつかない。他社の技術を素早く入手し、短期にビジネスを急拡大させる経営に各社とも舵を切っている。半導体市場調査会社「IC Insights」の調べでは、2020年の買収金額の合計は史上2番目の歴史的高水準にあるという。

 各社の買収戦略の原動力になっているのが低金利と株高。

 コロナ禍にあっても株式市場は景気実態と離れて相場が進行している。低金利で余ったカネが行き場がなく株式市場に投じられ、強い地合いが続く。

 ルネサスは今回、現金で買収するが、7千億円超をつなぎ融資で調達する。当然、財務は悪化するため、自社の株高を利用して、新株を発行し、一部を返済に充てる。ルネサスの株価は過去5年の高値圏にある。

 ただ、証券会社関係者は「17年のインターシル、18年のIDTの買収は、今のところ思ったような効果は得られていない。買えるから買えばいいというものでも……」と疑念を呈す。過去3回の買収金額の合計は1兆6千億円規模。有利子負債も7千億円以上に膨らんでおり、先行きを不安視する声もある。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事