2023-05-29

【政界】ウクライナや韓国外交で支持率上昇 三度目の正直を狙う岸田首相の奇策

イラスト・山田紳

永田町に「解散風」が吹いている。先の衆参5補欠選挙での自民党の勝利や、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催など、首相(自民党総裁)の岸田文雄が衆院解散に打って出る環境が整ったとされるからだ。年内の衆院解散・総選挙は既定路線とみられ、解散風はやみそうにない。長期政権を睨む岸田が奇襲、不意打ちを仕掛ける可能性もある。6月か秋か―。岸田がいつ「伝家の宝刀」を抜くのか注目だ。

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サミットの追い風に乗って

 ゴールデンウィークの期間中、アフリカ4カ国を歴訪した岸田は、最後の訪問国となったモザンビークで5月4日、記者会見を行った。日本ではアフリカ外交とは全く関係のない報道陣とのやり取りが、ニュースとなって駆け巡った。

 記者「与党内からG7広島サミット後、または臨時国会冒頭で衆院を解散し、総選挙に臨むべきだという声が聞かれる。衆院解散・総選挙について、どう対応する考えか」

 岸田「その質問については従来から申し上げているが、重要な政策課題が山積する中、結果を出すことに全力を尽くしているところであり、いま解散・総選挙は考えていない」

 岸田は最近、衆院解散の時期を巡る質問を受ける機会が増えているためか、表情を変えないまま「その答えに尽きている」と最後に付け加えた。

 それでも永田町の「解散風」は収まらない。「6月」と「9月」という具体的な解散シナリオがまことしやかに語られている。

「6月解散」論は、G7広島サミットの「追い風」がやまないうちに衆院選を行うべきだというもの。岸田は昨年秋から内閣支持率の下落に苦しんできたが、今年3月に日本の首相として戦後初めて戦地であるウクライナを電撃的に訪問したほか、戦後最悪と言われた日韓関係の正常化に向けて韓国大統領の尹錫悦と首脳会談に踏み切るなど、積極的な外交で一定の評価を獲得した。

 支持率は上昇に転じており、岸田政権の「中間評価」と位置づけられた衆参5補欠選挙(4月23日投開票)で、自民党は4勝1敗と薄氷の勝利を収めている。補欠選挙の応援演説会場で爆発物を投げつけられる事件もあったが、岸田は最後まで街頭でマイクを握り続けたことも追い風となった。

 G7広島サミットの外交成果を発信することで支持率はさらに上昇するはずだから、その勢いのまま衆院選を戦った方が有利だ─。自民党内にはそうした期待が一気に膨らんだ。

 新型コロナウイルスの感染症法上の分類を季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げ、コロナ禍で抑制されてきた社会経済活動を平時に戻すことが実感できれば、国民の好感を得やすい。

 また、岸田の掲げる「次元の異なる少子化対策」を経済財政運営の指針「骨太の方針」に盛り込み、成果をアピールすることもできる。6月21日に会期末を迎える国会最終盤で野党側が岸田内閣の不信任決議案を提出すれば、国民に信を問う「大義」になる。

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