2021-03-01

カラオケ店がシェアオフィスに早変わり! なぜ紳士服のAOKIがシェアハウスに参入するのか?

シェアオフィス1号店となる「たまプラーザ店」

5年後を目途に100店舗の開業を目指す



 東京・渋谷から電車で約25分。横浜市郊外、たまプラーザ駅から徒歩5分の商店街にあるのが、あるシェアオフィスだ。

 会議室には、壁面ホワイトボードや大型モニターが設置され、オンライン会議に必要な設備が整っている他、24時間営業なので海外との会議や交渉も可能。職場でもなく、自宅でもない、新しい働き方を提案している。

「新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、働き方改革が浸透してきて、人々の働き方が大きく変わった。また、在宅勤務をしていても、自宅では小さな子供がいたりして、なかなか仕事に集中できない時もある。世の中にはそういう〝ご不便〟が結構あるということに気づき、皆さんの不便の解決に向けてお役に立ちたいと考えた」

 こう語るのは、AOKIホールディングスAOKI WORKSPACE事業部事業責任者の原賢太朗氏。

 AOKI HDが、新たにシェアオフィス事業「AOKI WORK SPACE」に参入する。この一号店となるのが、たまプラーザ店である。

 この1年、新型コロナの感染拡大によって、日本でも出勤を減らし、在宅勤務を推進する企業が増加。一方、自宅では仕事の効率が良くない人もおり、会社と自宅の中間地点に位置づけるシェアオフィスの需要が高まっている。同社はこうした需要を取り込むのが狙いだ。

 AOKIグループの事業は大きく分けて3つある。祖業で紳士服『AOKI』を展開する主力のファッション事業の他、挙式披露宴施設『アニヴェルセル』を展開するアニヴェルセル・ブライダル事業、複合カフェの『快活CLUB』やカラオケ『コート・ダジュール』などのエンターテイメント事業だ。

 今回のシェアオフィス事業はこの3つに連なる次の事業に育成したい考え。今後は関東郊外を中心に、5年後を目途に100店舗の開業を目指すという。

「他社が手掛けるシェアオフィスを調べたら、ほぼ都内5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)に集中していることが分かった。
しかし、都心まで通勤するのは時間がかかり、会社に出勤するのと変わらないという声もあり、われわれは都心部ではなく、皆さんが住んでいる場所に近いところで勝負しようと」(原氏)

 紳士服チェーン2位のAOKI。ただ、近年は夏のクールビズが浸透したことに加え、昨今の働き方改革が加速し、年間を通じてカジュアルな服装での勤務を認める企業が増加。新型コロナの影響もあり、紳士用スーツは市場全体が低迷している。

 首位・青山商事の今期(2021年3月期)業績は、売上高1723億円(前年同期比20・9%減)、128億円の営業赤字となる見通し。このため、正社員の約1割にあたる400名程度の希望退職を募る他、全体の約2割にあたる160店舗を閉鎖することを決めた。

 AOKI HDも、今期は売上高1513億円(同16%減)、20億円の営業赤字となる見通し。経営環境は同様に厳しいが、赤字幅が小さいのは複数業態を抱えていることが大きい。

 近年、AOKIは不採算店舗を複合カフェ『快活CLUB』に相次ぎ業態転換。足元では長引く外出自粛により『快活CLUB』の客数は減少しているものの、ここ数年は複合カフェなどのエンターテイメント事業が業績に貢献していた。

 市場では「本業が落ち込んだ時にカバーできる事業があるかどうかが、両社の差になっている」(流通業関係者)と指摘する声もある。

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