2021-02-27

【菅下清廣の「株価はどう動く?」】すでに始まった「マネーバブル相場」、日本でも投機的動きが顕在化するか

戦後6回目の大相場は「2段ロケット」に


 以前からこの連載で指摘してきた、米国発の「マネーバブル大相場」はまさに始まっています。そのため、日経平均株価も2021年2月8日には、終値で2万9388円と、30年6カ月ぶりに終値で2万9000円を付け、バブル後の戻り高値となりました(その後2月15日には3万円台を記録)。

 日本も米国発のマネーバブル相場に乗り、中長期的には1989年の3万8915円を目指す相場が始まったと見ています。

 日経平均株価の動きを週足で見ると、12年11月13日の8661円からアベノミクス相場が始まり、18年10月2日の2万4270円で天井を打ったのですが、この間、週足ベースでは1万5609円上げました。

 天井を打ってから1年超休んだ後、20年3月19日にコロナショックを織り込んで1万6552円で底入れしました。新しい上昇相場がここから始まっています。

 私は以前から、今回のアベノミクス相場を戦後6回目の大相場になると予想しており、実際にその通りの相場がやってきました。前回も指摘した通り、戦後5回のうち4回は出発点から5倍以上上げましたが、1回だけ、途中で石油ショックが起きて2・39倍で腰折れしました。アベノミクス相場は、この時の波動とほぼ同じです。

 安倍政権は政治スキャンダル報道でリーダーシップを失い腰折れしましたが、期待のあった「第3の矢」、構造改革による成長戦略は菅政権に引き継がれ、「デジタル」と「グリーン」で成し遂げようとしています。

 その意味で、今回の戦後6回目の大相場は「2段ロケット」となります。1段目はアベノミクス相場、2段目は菅政権が長期化し、デジタル・グリーン革命が成功すればスガノミクス相場となる可能性があります。

 出発点が日足で1万6358円、週足でいうと1万6552円ですが、ここから2倍から2・5倍は上昇すると見ています。週足で2倍ならば3万2500円となります。当面の目標値は3万2000円から3万3000円を目指す展開です。

 ただ、菅首相が21年9月の自民党総裁任期満了後に再選されない場合には、後継者が「デジタル」と「グリーン」を引き継ぐかどうかが問題になります。しかし、菅政権の間に「デジタル庁」が発足することはほぼ間違いありませんから、もし菅政権が短命に終わっても、デジタル庁を中心とした「デジタル革命」は続くと見ています。

 菅政権を引き継ぐ有力候補の1人は岸田文雄氏ですが、現在デジタル改革担当大臣を務める平井卓也氏は岸田派に所属していることも好材料です。

「2段ロケット」で、日経平均は今年、山が低くとも3万2000円から3万3000円を付けるのではないかと見ています。その牽引役は当然「デジタル」と「グリーン」です。

 長期的には、先程も指摘したように1989年の高値を目指す相場がやってきます。なぜなら3万8915円から大底である09年3月10日の7054円までの下げ幅の半値戻しは2万3000円で、すでにこれを軽々突破しているからです。この2、3年のうちに3万8915円を目指す、場合によっては奪回する可能性があります。ただ、これはニューヨークダウの上昇次第です。

 今後の株高のテーマはニューヨーク発のマネーバブル相場ですが、株以上に上がり始めているのがビットコインです。ビットコインが上がり続ける限り、マネーバブルは続きます。ビットコインが付ける新高値は、株高の一つの先行指標になります。

 ビットコインは1年で価格が10倍以上になっていますが、このことはマネーバブル相場の予兆です。今後、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に修正がない限り、日米の株高は続くものと判断します。

「ロビンフッダー」の反乱


 先日、スマートフォン専用証券会社・ロビンフッド・マーケッツの利用者を中心とする「ロビンフッダーの反乱」が起きましたが、マネーバブル相場がすでに始まっている一つの例です。

 なぜ、この反乱が起きたかというと背景にあるのは米国内にある「格差」です。コロナ禍は、貧しい人をより貧しくするというように、社会的立場の弱い人に、より悪影響が出ています。

 個人投資家の中にはコロナ禍による実体経済悪を受けて職を失ったり、所得が減少するなど、厳しい状況に置かれている人もいます。こうした格差に対して、米バイデン新政権は1人当たり15万円を給付する計画を打ち出しています。

 コロナによる実体経済悪はすぐには解消しませんから、今後も給付金が出る可能性があります。そしてロビンフッダー達は給付金を得れば、それを投資の原資とするでしょうから、今後、ロビンフッダーは拡大しこそすれ、減ることはないでしょう。

 こうした反乱が続いた場合、一時的に株価が急騰したり、急落することはあっても、相場全体が崩れることは考えにくいですが、規制が強化される可能性があります。ロビンフッダーの反乱が過熱化するとSEC(米国証券取引委員会)の規制が入り株価が急落、しかしロビンフッダーは増え続け再び反乱が起きる……ということが繰り返されるでしょう。

 マネーバブルの影響が日本にも及ぶということは、こうしたロビンフッダーの反乱のような事態は日本でも起こり得ます。

 また、日本では業績の裏付けのある「デジタル」、「グリーン」関連銘柄の株価が上昇するのは当然として、それと関係のない、投機的、“カジノ”的な銘柄が今後上昇する可能性があります。

 多くの個人投資家が、短期的利益を求めて、“カジノ”的な銘柄を買う傾向が強まるのではないでしょうか。これが行き過ぎると日本でも規制が入り、ロビンフッダー対規制の戦いとなるでしょう。

 また、米国のように金融の知識に欠ける個人が勝ち、一方で目の前の経済の実体悪を過度に悲観的に見て、知識のある機関投資家は負けるという局面も出てくるのではないかと思います。

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