2021-03-09

規制・構造改革に身を投じて約20年 フューチャー会長兼社長・金丸恭文の「国の制度設計にアーキテクチャーを!」

今回のコロナ禍でも問われているのは危機管理策で、「要するに、トータルのデザインになってない。中央政府と地方自治体がバラバラで、野球でいえば三遊間に大きな穴がある」と金丸恭文氏。今の国のカタチ、企業のガバナンス(統治)、そして個人の生き方・働き方をどう変革し、新しい仕組みを構築するかという命題。1989年のフューチャー創業以来、取引先のデジタル化による変革、生産性向上に打ち込んできた。国の各種審議会や規制改革の仕事にたずさわって20年近く、既存権益の兼ね合いもあって、なかなか旧来の秩序から脱却しにくい国情だが、「産業界や農業にも潜在力はあります。それをDX(デジタルトランスフォーメーション)で掘り起こせる」と金丸氏はソリューション(解決策)は必ずあると強調。氏の発想の根源は『つなぐ』こと。ITやデジタル技術と既存産業をつなぐ、あるいは日本の秀でた農産物をDXで海外とつなぐことで、日本全体の浮揚を図るという発想。そのためには何が必要か?

リスク管理は日本の弱点

「ちょっと前にPCR検査をしました。僕は3回やっています。VIPと会食する前とか、その業界のリーダーと会う前に検査をということですね」

 コロナ禍対策のため、政府の1都9県に対する緊急事態宣言の延長が取り沙汰されている1月末、東京・品川区大崎のフューチャー本社に会長兼社長の金丸恭文氏を訪ねると、こんな言葉が返ってきた。

 コロナ禍で3密(密集、密接、密閉)を避け、働き方もリモートワークが浸透。この日も、大崎の超高層ビジネスタワーにあるフューチャー本社は社員のリモートワークのため、オフィス内は閑散。創業者で会長の金丸氏は経営のトップとして、また政府の規制改革、成長戦略関連の仕事もあり、関係者との打ち合わせで、どうしても面接しなければならない場面もある。

 そうしたときに、先方のことも考えて、会う前に民間でのPCR検査で『陰性』を確認しておこうという配慮。 万が一、『陽性』になっていたとすると、業務は保健所に移され、あとは法律に則って行動していくことになる。

 今回のコロナ禍の第3波で、日本国内も重症者が増加し、医療崩壊の危機が叫ばれている。

 医師や看護師などの人的資源や医療機器が揃う公立病院が中心にコロナ患者対応を行うのだが、重症者が中等症化したときの転院などがスムーズに行かないケースが随所で見られた。

 民間の医療機関や病院は全体の8割を占めるが、その地区の基幹病院と中規模の病院、そしてクリニックや診療所といったところとの病院連携がうまく取れていないということ。

 医療機関の連携はコロナ前から、その必要性がいわれてきたのだが、連携が進んでいなかったことが今回のコロナ危機で露呈した形。

 こうした現状を、金丸氏はどう見るのか?

「要は、リスク管理体制をどうするかという問題。感染症は通常起きるものではないし、ふだんはマーケットがない。マーケットの論理やニーズの論理ではなくて、リスク管理の領域になる。このリスク管理問題は日本のウィークポイントですね」

 金丸氏は、“リスク管理の弱さ”を指摘し、東日本大震災(2011年)を引き合いに、日本の原子力発電所が大津波の襲来を想定していなかったこと、もしくはその想定が甘かったことを挙げる。

 また感染症対策も不十分。SARS(重症急性呼吸器症候群)が2002年11月、中国・広東省で非定型性の肺炎患者発生として報告され、アジア諸国やカナダなどで感染が拡大したときも、たまたま日本に上陸しなかったことで、SARSの教訓も得られなかった。

「他国での発症例を見て、あんなことになってはいけないからと学習して、次に備えなければいけないのに、これもやって来なかった。備えあれば憂いなしという故事や大切な言い伝えがあるのに、備えていない。備えてこなかったから憂いしかないと」

 今回、日本で接種するワクチンも米ファイザー社と英アストラゼネカ社の製品。海外産を手当てしての接種ということだが、国産ワクチンの開発をどう進めるかという危機管理も大事。

 国内では塩野義製薬が開発を進めており、国産のワクチンの誕生にも期待がかかる。

 100年に1回のパンデミック(世界的大流行)、あるいは10年に1回位という確率で起きるような感染症にマーケットの論理では対応できないのも事実。

 国民の命を守るという次元での危機管理、備えをどう図っていくかという命題である。

 どう対応していくべきか。

「多分、政治がリーダーシップを取らなければいけないですよ。だけど、政治がリーダーシップを取るときに、例えばコロナ禍に遭遇したから重要性は分かっていますが、コロナが来る前にその準備にものすごくお金と労力を使うということが、政治的には票にも直結しない」

本誌主幹・村田博文

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