2021-03-08

なぜ調味料メーカーが医療・福祉なのか? 大西 壯司・日の出医療福祉グループ代表理事に聞く!

大西 壯司・日の出医療福祉グループ代表理事

企業が存続できるのは地元に愛されてこそ


 ─ 兵庫県を中心に、医療や介護、保育などを手掛ける日の出医療福祉グループですが、まずはグループの概要から聞かせてもらえますか。

 大西 われわれ日の出医療福祉グループは、「社会福祉法人日の出福祉会」「医療法人社団奉志会」「社会福祉法人 博愛福祉会」という3つの法人が集まって生まれた共同事業体です。

 兵庫県の稲美町という小さな町を中心に、兵庫、大阪、埼玉、東京、神奈川で、医療・介護・保育などのサービスを提供し、地域社会に貢献することを目指しています。

 5つの都府県で、全部で事業所は156カ所ありまして、約2900名の従業員が働いています。

 ─ 3千名近い規模になると、かなり大きなグループですね。

 大西 ええ。ざっと申しますと、奉志会に所属する医師の数は大西メディカルクリニックとコスモクリニックを合わせて30名、看護師は46名、セラピストが21名です。日によって違いますが、1日平均の外来患者数は、大西メディカルクリニックで約1千名、コスモクリニックで約250名です。

 また、各法人に所属する介護福祉士は合計835名(奉志会108名・博愛福祉会508名・日の出福祉会219名)になります。やはり、これだけ多くのスタッフを抱え、地域に貢献しているわけですから、責任の重さというのも感じています。

 ─ 今でこそ、医療と介護の連携時代と言われるんですが、日の出医療福祉グループはその先駆けとして実行してきたと言ってもいいですか。

 大西 そうですね。それがわれわれの生きる道だと信じています。

 やはり、これだけ国全体で少子高齢化が進みましたから、医療や介護にかかる社会保障費はどんどん膨らむ一方ですが、国の税収が減っていくと現在の制度が維持できないことは目に見えている。そういう中で、医療と福祉の連携というのは非常に大事だと思っていますし、われわれはそれを実践してきたつもりです。

 もともと、われわれの原点は『日の出みりん』で知られるキング醸造という会社です。1900年(明治33 年)に設立され、創業120周年を迎えた会社でして、本みりんや料理酒、清酒などの製造・販売を行ってきました。わたしが生まれたのが1950年ですから、ちょうど50周年の節目の年だったんですが、キング醸造という会社は創業以来、節目の年には地元へ何かしらの貢献をしてきたんです。

 ─ なるほど。もともとの発祥はみりんをはじめとする調味料の会社だったと。

 大西 われわれは120年という長い間、稲美町という、一つの小さな地域で過ごしてきました。自分で言うのもなんですが、これだけの間、企業が存続できるのは、地元に愛されてこそだと思うんですよ。

 やはり、われわれの企業の生き方として、上げた利益は地元に還元しないといけないと考えています。地元に還元してこそ枝葉ができると。だから、こういう言い方をするとお叱りを受けるかもしれませんが、東京支店で利益ができたとしても、それを東京に還元するというよりは、地元の稲美町に還元したいと考えているんですね。

 そういうことで、何周年という節目の年には地元への寄付などの地域貢献を続けてきました。それで創業90周年を迎えた1990年に、これからの時代は医療や福祉が大事になると考えて、記念事業の一つとして特別養護老人ホームを建設したんです。これがスタートで、会社を育ててくれた稲美町への地域貢献の新しい形の一つとして、1992年に日の出福祉会を設立したのです。

 ─ そういう経緯があったんですね。地元への還元の一環だと。

 大西 そうなんです。その後、同じく1992年に奉志会の前身となる大西整形外科が設立、翌1993年に博愛福祉会が設立され、それぞれが地域に密着しながら、自立した活動を行ってきました。

 しかし、これだけ時代の変化が激しくなってきて、持続可能な福祉のあるべき姿を追求しているうちに、3つの法人が有機的につながり、シナジーを発揮していかなくてはならないという思いが強くなってきました。

 そういうことで、3法人が本格的な連携を進めようと、2016年に日の出医療福祉グループを設立したということです。ですから、地域へ恩返ししたいという気持ちは本当に強いですね。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事