2021-03-08

なぜ兵庫・淡路島に本社機能を移転したのか? 南部 靖之・パソナグループ代表を直撃

南部 靖之・パソナグループ代表

どっちの生活がより人間らしいのか


 ── 本社機能を東京から兵庫県の淡路島に移転すると発表して5カ月が経ちました。この間の手応えはいかがですか。

 南部 手応えはかなりあります。今は2度目の緊急事態宣言が発出されて、特に東京は大変じゃないですか。今は多くの会社がリモートワークを推奨していると思うんですが、社員にしたら、リモートでずっと家にいるから、上司や部下との関係も希薄になってしまう。リモートだけでは、社員同士の絆も生まれないし、大きな決断もしにくいと思います。

 でも、淡路島は違います。常に人がいるから、社員同士の絆ができるし、仕事の効率も上がるような気がします。食事も、東京は密を避けるために、人と人との間隔を2メートル開けろというけど、物理的に難しい場合もあるじゃないですか。

 でも、こっちにいると自然とソーシャルディスタンスがとれるので、そこまで神経質になることもないし、何より通勤時間ががらりと変わった。満員電車に揺られて通勤させられるストレスがなくなったのは大きいと思います。

 ── 満員電車による通勤がなくなったというのは大きな変化ですね。

 南部 ええ。だから、社員の目がイキイキしていますよ。

 最近よく聞くのが、今は外出の自粛が長く続いたため、ご老人の足腰が弱って大変なんだそうです。要するに、今までは外に出て、運動することを奨励されていたのに、新型コロナウイルス対策でずっと家にいて、外で運動するのが難しくなっているわけです。

 介護の専門家に聞いたら、現場はすごいですよ。今は介護をしてくれるヘルパーさんが自宅に来るのが難しい場合もあるので、これまでのように、ご老人がお風呂に入れないことも多くなるし、何よりヘルパーの皆さんとコミュニケーションもとれないと。

 ── ヘルパーさんや医療従事者の方には本当に頭が下がりますが、感染リスクがある中でヘルパーさんに「自宅まで来い」とは言えませんしね。

 南部 だから、わたし自身いろいろ考えさせられましたよね。BCP(事業継続計画)の一環として、本社機能を東京以外のところに移してもいいんじゃないかと。それで昨年5月の緊急事態宣言があけた頃に決めて、発表したのが9月だったということです。

 ── 今は南部さんは東京に来ないんですか。

 南部 毎月一度くらいは東京に行きますけど、最近はずっと淡路島にいます。

 淡路島にいると、換気しようと思ったら窓を開ければ済むけど、東京はビルばっかりで窓が開かないから換気もしにくい。家の中にいる時も、一人で車に乗っていてもマスクをしなければならないと言われると、東京に行くのが怖くなりますよ。

 これは淡路島だけじゃないと思うんです。田舎で生活すれば自然とソーシャルディスタンスがとれるけど、東京は人が多いから、どこにいても常に密になってしまう。こういうことを考えると、どっちの生活がより人間らしいのかと。そう思ったら、淡路島に来て良かったなと思います。

 ── 今は淡路でどれくらいの社員が異動されたのですか。

 南部 120人くらいです。予定よりだいぶ多いですよ。ただ、11月くらいから全国的にコロナの感染がまた広がり始めて、ここ3カ月は社員の移動はストップしています。

 問題はこの緊急事態宣言がどれくらいで解除されるかですよね。本来は4月から、また50~60人ほど増やそうと思っているんですが、こればかりは分かりません。

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