2021-03-08

水素バリューチェーン構築へ 伊藤忠商事が仏・ガス企業と提携

鈴木善久・伊藤忠商事社長

伊藤忠商事(鈴木善久社長)が、工業用ガス世界最大手の仏エア・リキード社の日本法人と提携。グループのエネルギー商社・伊藤忠エネクスを含めた3社で、低炭素水素の製造から活用までを網羅する水素バリューチェーン構築に関して覚書を締結した。

今回の提携によって、伊藤忠が持つ国内外のネットワークを活用し、水素市場の開拓を目指すという。3社は大都市圏における地産地消モデルを念頭に、競争力のある水素の製造・供給、水素ステーション事業の拡充を図る考えだ。

 伊藤忠は「国内外での水素事業を推進し、将来的には日本への水素の輸入を視野に入れた国際水素バリューチェーンの構築を目指す」としている。

 EU(欧州連合)が2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言したのに続き、日本も2050年まで、中国も2060年までのカーボンニュートラルを宣言するなど、世界中で地球温暖化対策に取り組む機運が高まっている。その目標実現に向け、“究極のクリーンエネルギー”として注目が集まるのが水素だ。

 中でも期待されているのが、水素を活用した燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」などへの活用。

 日本には水素を供給する水素ステーションはすでに約130カ所ある。世界最多なのだが、それでも建設には1カ所あたり数億円かかるとされ、まだまだコスト面での課題も多い。

 あるエネルギー企業トップは「水素ステーションの建設は割と計画通り進んでいるが、肝心のFCVが全然増えていない。いつも“卵が先か、鶏が先か“という議論になって終わってしまう」と、もどかしい様子。

 商社業界でも、昨年6月には三井物産が米国の水素ステーション運営会社に国際協力銀行と共同出資を決めた他、8月には住友商事がイスラエルで水素製造技術を開発するスタートアップ企業に出資。各社とも水素関連ビジネスへの関心は高い。

 低炭素化社会の実現に向け、商社による水素関連の投資が続きそうだ。

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