2021-03-09

【環境経営が成長に直結する時代】サーキュラーエコノミー実現に向け、東大と連携 三菱ケミカル社長・和賀昌之の「化学会社も人類の共有財産を創る時代」

写真左から、藤原帰一・東京大学未来ビジョン研究センターセンター長、五神真・東京大学総長、石井菜穂子・東京大学理事、グローバル・コモンズ・センターダイレクター、和賀昌之・三菱ケミカル社長


〝総合化学〟へのこだわり

 三菱ケミカルは昨年、スイスのエンプラのリサイクル会社、ドイツの炭素繊維原料メーカーやリサイクル会社に出資。日本だけでなく欧州でも炭素繊維製品の製造から回収、リサイクルまで手掛けるなど、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への投資を加速させている。

 クリーンな水素を使った化学品の製造やCO₂を原料として活用、また人工光合成などの技術開発でも貢献したいという。

 和賀氏が18年4月の社長就任以来訴えてきたのが「徹底的に〝総合化学〟にこだわる」こと。「有機も無機もそうですが、こっちの技術が隣の技術に良い影響を与える。こっちを知っているから向こうもわかることがある。専門的に深掘りするのも大切ですが、そこに入り込んでしまうと横への広がりが作れなくなるリスクがある」からだ。

 特に現代のように「原因がよくわからない社会命題を与えられたとき、戦える武器が1個か2個ではダメなんです。われわれ総合化学は、どの技術でどう問題に対処していくべきかで一日の長がある」と力を込める。

 強さの源泉は、日本の化学メーカーが昭和50年代から進めてきた「C1ケミストリー」の研究。C(カーボン)を分解する化学ではなく、Cを足して化合物を合成する研究だ。当時は原油価格が安く出番がなかったが、「われわれの分子合成技術にはその蓄積が今も綿々と残っている」と語る。

 世界の化学メーカーが専業もしくは医薬メーカーへと変わる中、今こそ、日本の総合化学は強さを発揮できると考える。

「原料を石油ではなく植物由来にする、CO₂を原料化するなどいろんなアプローチがある。うちはすでに植物由来の生分解性プラスチックや植物由来のプラスチックを出している。すでにマーケットに実証性のあるものを上市している先行者メリットはかなりあると思っています」

 企業は自らの技術力を磨き、その技術を社会に実装させる仕組みを大学が牽引する。単なる1企業と1大学の連携ではなく、社会、世界を巻き込んだ産学連携が動き出している。

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