2021-03-10

ENEOSホールディングス・大田 勝幸社長が激白! 「当社は石油だけをやっている会社ではない」

大田 勝幸・ENEOSホールディングス社長

国内最大44カ所の水素ステーションを運営


 ─ コロナ危機は全産業界に影響を与えていますが、まずはこの1年のコロナ禍の感想から聞かせてもらえますか。

 大田 われわれの会社や業界という意味で考えると、もともと石油の需要が構造的に減っていくという見通しの中で、コロナによって、さらにそれに拍車がかかる可能性があると感じました。

 やはり、行動抑制やテレワークの浸透などで人の移動が無くなっていく。移動することでエネルギーを使い、産業が起こるからエネルギーを使うわけで、その移動や経済がストップしてしまうとエネルギー需要が減ってくるわけです。

 当社はすでに2040年を見据えた長期ビジョンを発表し、石油需要の減少を想定しつつ様々な改革に着手してきました。この構造改革の方向性を変える必要はないと思いますが、よりスピード感をもって意思決定や施策を実行していかなければならないと考えています。

 ─ やはり、スピード感をもって。

 大田 ええ。事業構造改革のスピード感が大事だと思います。

 一方で、この1年の間に様々な自然災害がありました。よく災害が起こると停電が起きたりするんですが、そうなると発電機で電気を起こすために油を持ってきてくれと言われたりします。そういう時にわれわれは社会的使命を感じるわけです。

 やはり今回のコロナ禍でも、サービスステーション(ガソリンスタンド)や製油所は生活に必要なエネルギーを供給していますので、営業・操業を止めてはいけないという社会的使命を担っている責任の重さも改めて認識しました。

 ─ さて、日本は2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。実現に向けては大変な努力が必要だと思うんですが、ENEOSとしてはどのように取り組んでいきますか。

 大田 当社は化石燃料を扱っていますので、CO₂(二酸化炭素)に対して責任を持たなくてはならないと認識しています。

 そうした認識の下、当社は昨年5月に、2040年に自社が排出するCO₂をカーボンニュートラルにするという目標を公表しました。これには、石油が減ることを恐れるのではなく、環境のことを考えることが新しいビジネスチャンスでもあるという戦略的な意味合いもあります。

 例えば、CO₂フリーの水素を海外から運んでくることになれば、我々が持つ船舶や貯蔵タンクがインフラとして活用できることは強みになります。技術革新を通して、CO₂削減効果のある新しい燃料開発や水素の分野などで新しいビジネスを創造し、低炭素社会の形成に貢献していこうと考えています。

 もちろん、これは簡単にできる話ではありませんし、技術革新もわれわれ1社だけでできる話でもありません。ですから、いろいろな企業との連携も考えながら、目標達成に向けて頑張っていきたいと思います。

 ─ 特に近年、注目されているのが水素ですね。ENEOSグループは以前から、燃料電池自動車(FCV)や燃料電池バスなどに水素を供給する水素ステーション事業を運営していますね。

 大田 われわれは国内44カ所の水素ステーションを運営しています(20年12月時点)。

 ─ これは最大と言っていいですか。

 大田 国内シェアの3割強を占めているので、おそらく最大だと思います。

 国の方でも水素社会の実現に向けたロードマップを作成しておりますが、水素の普及に向けては課題もあって、車だけの議論をしていても意味がない。やはり産業用や発電用に水素を使うとか、大量に水素を使わないとコストも下がってこないということで、もっと戦略的にやっていく必要があると思います。

 また、水素は使う時はクリーンですが、問題はどうやってつくるかということです。

 ─ いまは低コスト、脱炭素の水素を大量に製造するには、天然ガスを利用することが最も効率的とも言われています。

 大田 そうなんです。ただ、天然ガスはCO₂を排出しますので、CO₂をどこかに埋めなければならない。そうなると、CCS(CO₂の回収、地下貯蔵)やCCUS(CO₂の回収、利用、地下貯蔵)などの技術開発が必要になってきます。

 当社も上流事業として米国でのCCSの知見がありますが、ここは国や産業界の力を結集して克服していかないといけない問題だと思います。

 もう一つは、水素の搬出方法です。われわれは例えば、より安価な海外の再エネや褐炭から製造されたCO₂フリー水素を低温で液化したり、MCH(メチルシクロヘキサン)という物質にして日本へ輸出する実証事業に参画していますが、こうした国際的なサプライチェーンの構築に向けても積極的に取り組んでいく考えです。

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