2021-03-14

東証社長に大阪取引所社長の山道氏、次代の経営体制づくりも課題

東京証券取引所

日本取引所グループ(JPX)は傘下の東京証券取引所社長に、大阪取引所社長兼JPX最高執行責任者(COO)の山道裕己氏が就くトップ人事(4月1日付)を決めた。東証は昨年10月、システム障害を起こし、当時の社長・宮原幸一郎氏が引責辞任。JPX最高経営責任者(CEO)の清田瞭氏が暫定的に東証社長を兼務してきた。

「トラブルの再発防止やレジリエント(強靭)な組織作りなど東証が抱える課題に対処するには、取引所運営に精通した山道氏が適任だ」。JPXの清田CEOは新体制を発表した2月下旬の記者会見でこう強調した。

 山道氏は1977年に野村證券入社。投資銀行部門を主に歩み、欧州や米国の現地法人トップも務めた。2013年6月に旧大阪証券取引所の社長に就任、現在はJPXCOOとしてグループ全体の成長戦略も担ってきた。

 ただし、関係筋によると、清田氏は元々、「東証生え抜きに次代の経営のバトンを渡したい」との思いがあったとされる。日本証券クリアリング機構社長の静正樹氏や、同副社長の岩永守幸氏、東証取締役の小沼泰之氏らの名前が挙がっていた。

 一方、金融当局の間では「大手証券の元トップクラスを起用すべき」との意見もあった。そんな中、山道氏就任の流れを決めたのは、国際金融都市構想を掲げる菅義偉政権の「国際派の登用」を望む意向だったという。

 生え抜き幹部3氏はいずれも海外経験や国際的な人脈が豊富とは言えない。大手証券元トップクラスの招聘も難航が必至な中、20年近い海外駐在経験を持つ山道氏に白羽の矢が立ったという。さらに生え抜きからは、岩永氏を山道氏の後任の大阪取引所の社長に就けることでバランスにも配慮した形だ。

「米グーグルやアマゾンが取引所のライバルになる時代が来る可能性は十分にある」と公言する山道氏が、東証トップとして大胆な戦略を打ち出せるかが注目される。さらに、清田氏と山道氏には生え抜き幹部を中心に次代の経営を担う人材を育てることも至上命題となりそうだ。

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