2021-03-22

【経産省】温室効果ガス削減に向け「炭素価格付け」導入を検討

脱炭素に向けて待ったなしだ

二酸化炭素(CO2)排出量に応じて企業や個人に経済的な負荷を掛ける「カーボンプライシング(CP、炭素価格付け)」に関し、経済産業省が本格的な検討に乗り出した。

 CPは欧米を中心に導入の動きが進むが、日本企業の活動を阻害しかねないことから、同省はこれまで慎重な姿勢だった。
しかし、菅義偉首相が昨秋に脱炭素の目標を掲げたのを機に、ようやく重い腰を上げた形だ。

 CPの主な手法としてはCO2排出に対して課税する「炭素税」、あらかじめ割り当てられた排出枠を企業間で取引する「排出量取引」、温暖化対策が十分でない国・地域からの輸入品に税金などを課す「国境調整措置」などがある。とりわけ国境調整措置は欧州連合(EU)が2023年にも開始する方向で調整を進め、米バイデン政権も導入に前向きな姿勢だ。

 仮に欧米で国境調整措置が発動された場合、日本企業の取り組みが不十分だとみなされれば欧米への輸出で不利な立場に立たされる懸念がある。

 関係者によれば、菅首相が「対応が遅れれば、日本の製品が欧米市場から締め出されかねない」と強い危機感を抱いたことから、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の目標設定をはじめとする脱炭素化に向けた政府内の動きが急速に進んだという。

 首相の指示を受け、CPに関する経産省の有識者検討会が2月中旬に始動。

 環境省も、中央環境審議会での議論を2月初めに再開した。

 環境省が温暖化対策の実効性を高めるために厳しい規制も辞さない立場なのに対し、経産省は企業の負担をできる限り軽減したい姿勢だ。

 経産省検討会の初会合では「企業に追加的な負担を強いる制度は反対だ」(日本商工会議所)と配慮を求める声が相次いだ。同省幹部も「企業が行動を変えようと思うほどに高率の炭素税を課せば、日本の産業は干上がってしまう」と厳格な制度の導入には慎重な考えを示す。

 年内に予定される方向性の取りまとめに向けて、両省の駆け引きが本格化しそうだ。

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