2021-03-31

マルハニチロ社長・池見 賢が語る「魚は健康食そのもの」

1957年兵庫県出身。81年京都大学農学部卒業後、大洋漁業(現マルハニチロ)入社。2008年マルハニチロ食品(当時)海外部長、11年マルハニチロホールディングス(当時)執行役員、14年マルハニチロ執行役員、17年常務執行役員、19年専務執行員などを経て、20年4月より現職。ソロモン諸島やタイなど海外勤務を長く経験。

巣ごもり需要をどう捉えるか──。外出自粛や3密回避、訪日客の蒸発で外食向けの業務用やカニ等の高級水産食材が低迷。一方、旺盛な巣ごもり需要で家庭向けの冷凍食品は前年同月比1割超の伸びが続く。

 1度目の緊急事態宣言時には缶詰やレトルト食品が売れたが、2度目の宣言時には売れ筋が「冷凍食品では総菜や中華料理のおかずなど、家族みんなで食べられる商材」に変わった。

 冷凍食品などの食品事業は大きな柱。味の改善をはじめ、袋がそのまま皿になる「ワイルディッシュ」など、「共働き世帯や単身世帯の増加によって変わるニーズをいち早くキャッチアップしていく」と力を入れる。

 もう1つの柱が水産事業。世界の1人当たりの水産物の年間消費量は20㌔㌘超。人口が増えれば消費量も増えることになるが、世界の水産物生産は約2億㌧で推移。そのうち天然漁業は9千万㌧、養殖が1億1千万㌧を占めるが、漁獲規制等の影響で天然が増える見込みはない。

 そこで2010年に民間で初めて成功させたのがクロマグロの完全養殖。15年には商業出荷も開始している。今後は気象やマグロの生育状況の蓄積データを活用し、適切なタイミングでの給餌などで生産性を高めていく。「当社が2020年に創業140年を迎えられたのも天然資源のおかげ。卵からふ化させる完全養殖は天然資源に依存せず、環境にも優しい。この付加価値を国内外で高めていく」

 成長事業として期待するのが「介護食」。病院や介護施設で人手不足が顕著になる中で、「冷凍食品の介護食は課題解決の先鋒」と期待する。食材を酵素分解させて柔らかくする技術や咀嚼のレベルに合わせた硬さを取り揃えるなどの技術を生かし、介護する人、介護される人に優しい食を開発している。

 大洋漁業(当時)に入社したのは「海外で仕事をするのが夢だった」から。念願かなって16年間、ソロモン諸島やタイで過ごした。「魚は高タンパク質で健康食そのもの」──。水産資源の枯渇に対応し、グローバルでのブランド力を高める考えだ。

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