2021-04-05

三井不動産・岩沙弘道会長「在宅勤務かオフィスかの二者択一ではなく、 いかに融合させるか。その知恵が問われている」

岩沙弘道・三井不動産会長


コロナ後の街の姿は?


 ─ 2019年から、日本橋再開発は第3ステージに入ったと。

 岩沙 第3ステージでは、昭和通りを境にWESTエリアとEASTエリアという個性の異なる2つのエリアを合わせて「GREATER日本橋」と呼び、それぞれの街の魅力を生かしながら、世界に向けて開かれた街にしていこうと取り組んでいます。

 第3ステージでは、先程お話した日本橋の地下化が大きな事業ですが、費用は約3200億円、期間は約20年かかります。

 川沿いには、商業店舗の他、広場などを開発し、賑わいを生みます。また、日本橋と東京駅周辺を歩行者ネットワークでつなぐことも可能になります。さらには日本橋で我々が保有するホールやカンファレンスを活用し、国際的なイベントを開催したいと考えているんです。

 ─ コロナは今後の街づくりをどう変えますか。

 岩沙 グローバル時代で感染症は今後、繰り返し起こる可能性があります。我々不動産業は、感染症が起きた時でも安心・安全、そして快適な施設を開発していく必要があります。

 オフィスもホテルも非接触になっていくでしょうし、飛沫や空気の流れはスーパーコンピューターの活用で見える化できます。

 ─ デジタル化が大きなテーマですが、不動産のデジタル化への考え方は?

 岩沙 当社グループのロゴである「&」マークは、都市と自然、経済と文化、働くことと遊ぶことといった一見背反する概念を「あれかこれか」ではなく「あれもこれも」と結び付け、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の構築と継続的な利益成長の実現」などを象徴的に表現したものです。まさに、リアルとネットは「あれかこれか」の「or」ではなく「あれもこれも」の「&」で、いかに融合させるかが大事です。

 働き方でも、コロナで在宅勤務が浸透しましたが、本社オフィスがいらなくなるかというと、そうではありません。新たなこと、創造的なことをやっていくにはオープンイノベーションで、様々な人が集まり、その交流の刺激の中で得られるものが、ひらめきにつながります。

 今後は在宅勤務か本社オフィスかの二者択一ではなく、個人が自分の担っている仕事やライフスタイルによって、働き場所や働き方を選択するようになります。我々はその選択に十二分に対応できる場を提供していきます。しかもハードだけではなく、テクノロジーを活用して価値創造に貢献できるサービスを充実させる。

「場」の価値だけで競争するのではなく、そこに訪れてどんな感動や出会い、喜びがあるのかが大事です。我々不動産業界は、多様な観点から新たなサービスを生み、オープンイノベーションを実現させられる「場」を提供することができるかが大事になってくると思います。

 ─ 人々の生活、健康にも関わるようになりそうですね。

 岩沙 そう思います。了承を得た上でデータを集め、それをフィードバックし、食生活や運動に活用してもらう。そのための施設は我々が用意します。

 今、柏の葉スマートシティでは実証から実装の段階に入っています。ここには「KOIL」(柏の葉オープンイノベーションラボ)という拠点がありますが、この周辺のオフィスで働く人、マンションに住んでいる人が参加し、自分の健康状態を計測し、把握できるようになっています。

 ─ 最後に、日本経済は今後どうなっていくとお考えですか?

 岩沙 コロナ次第ですが、ワクチンや治療薬も整ってきていますし、東京オリンピック・パラリンピックも開催され、秋には局面が変わっていることを心から期待しています。

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