2021-04-09

楽天に巨額出資でも成長戦略が見出し難い日本郵政

増田寛也・日本郵政社長

「政治案件か?」との見方も


 日本郵政が楽天に約1500億円を出資し、資本業務提携することを決めた。資本提携に踏み込んだ背景には、かんぽ生命保険の不正販売問題を受けた経営刷新で昨年1月に発足した増田寛也社長体制が成長戦略を描けて来なかったことがある。

 特に日本郵便の20年4―12月期の郵便・物流事業は、売上高が前年同期に比べて3%以上減り、営業利益は3割近い減益。

 かつては金融子会社2社の収益が郵便の不振をカバーしていたが、今はそれも全く期待できない。そんな中、増田氏が頼んだのが、楽天とのタッグによるネット通販向け宅配便(ゆうパック)の拡大策だった。

 3月末に第三者割当増資を引き受けた日本郵政は楽天の第4位株主(出資比率約8・3%)に浮上。今後は資本の論理もバックに、日本郵便の楽天市場向け宅配便受注を伸ばしたい考え。ただ、ネット通販でアマゾンやヤフーと熾烈な顧客争奪戦を展開する楽天は送料を抑える必要があり、大幅な割引を求めてくる可能性がある。

 今回の提携には、楽天モバイルの販促や基地局の設置に全国の郵便局網の活用も盛り込まれ、業界では「楽天側に有利な内容」(業界筋)と見られている。永田町では「菅義偉首相や総務省が日本郵政に巨額出資を促したのではないか」(永田町筋)との穿った見方も出ているほどだ。

 だが関係筋によると、今回の提携は、明確な成長戦略を描けない日本郵政側が「活路を開きたいと楽天に抱き付いた」のが実態のようだ。増田氏には楽天のカード会員の活用、かんぽ生命の保険販売のテコ入れ、ゆうちょ銀行のフィンテック事業拡大の狙いがある模様。

 しかし、「他力本願」一辺倒では日本郵政グループの本格的な業績浮揚は図れず、事実上、暗礁に乗り上げている郵政民営化を再び軌道に乗せることも難しい。日本郵政は過去に日本通運とのペリカン便事業や豪物流大手トール社の買収に巨費を投じながら、全く成果を挙げられなかった“前科”がある。

 増田氏ら経営陣には、これらの苦い教訓を踏まえ、楽天との提携を、日本郵便をはじめとした自社の競争力強化につなげる周到な戦略が求められそうだ。

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