2021-04-08

「物言う株主」の提案が可決 東芝の経営戦略に影響か?

車谷暢昭・東芝社長CEO

事業売却を繰り返し、世界で戦える弾がない…


 東芝の臨時株主総会で、2020年の定時総会での取締役選任を巡る再調査などを求めるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの提案が可決された。

 シンガポールの投資ファンドで筆頭株主のエフィッシモは昨年の定時総会で、組織風土やガバナンスの問題を解決するため、独自の取締役案を提案したが、否決された。しかし、今回、「物言う株主(アクティビスト)」の主張が支持されたことで、東芝の経営戦略が大きな方向転換を迫られるかもしれない。

 エフィッシモは今回、20年の定時総会での議決権集計方法に問題があり、調査する必要があるとして弁護士3人の選任を提案していた。東芝は2月17日に開いた取締役会で、全会一致で提案に反対決議していたが、臨時総会を経て、再調査を突きつけられた格好だ。

 窮地に追い込まれたのは東芝経営陣。昨年はエフィッシモの提案を退けたものの、ここにきてアクティビストの提案が可決されたことで東芝のガバナンスに「NO」が改めて突きつけられた形だ。

 東芝は2017年以降に債務超過を解消するため収益の柱だったメモリー事業を売却。第三者割当増資で多くの海外ファンドから出資を受けているが、「必ずしも株主との対話が円滑といえなかった」(市場関係者)。

 メモリーと並んで中核事業に位置づけていた原子力事業は先行きが見えず、現在の中期経営計画では再生可能エネルギー事業の強化などを進める東芝。

 社長の車谷暢昭氏は社長就任から2年目、CEO(最高経営責任者)として4年目を迎える。

 ただ、市場では「『CPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業として、プラットフォーマーになる』と車谷氏の鼻息は荒いが、プラットフォーマーになりうるのはレジのPOS(販売時点情報管理)システムくらい。事業売却を繰り返し、手元に世界で戦える弾が残っていない」との声は大きい。

 かつての栄光を捨て、ニッチ市場で高収益を狙えばよいが、「社員の意識はかつての『大東芝』のまま」(同)。果たして、アクティビストの提案は東芝のガバナンス改革につながるか。

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