2021-04-12

【人気エコノミストの提言】「コロナ国債」は必要か?

3月26日、参議院本会議において、2021年度予算が成立した。

 新型コロナショックへの対応もあり歳出が膨張を続けたため、一般会計の総額は約106兆円と9年連続で過去最高を更新した。

 予算規模の拡大に歯止めがかからないなか、新型コロナショックへの対応に必要な資金を「コロナ国債」を発行して調達すべきとの主張もあるが、筆者は少なくとも現時点ではその必要性は薄いと考えている。

 経済対策に必要な資金を「コロナ国債」で分別管理するやり方には、メリットとデメリットの双方がある。

 メリットとしては、経済対策に充てられる歳出について、新型コロナ対策の歳出だと明記しておけば、感染症の拡大が収束した時点で、速やかにその部分を終了できるという主張がある。

 他方、デメリットとしては、新型コロナ対策という大義名分の下に、歳出の増加に歯止めがかからなくなり、結果的に「費用対効果」の面からのチェックが甘くなる懸念がある。

 リーマン・ショックなどの過去の様々な危機と、新型コロナショックが決定的に異なるのは、前者が所詮は人間の所業の結果、起きた「人災」であるのと比べて、後者はその根本的な原因は環境破壊などの人類の不遜な行動にあるにせよ、ある種の不可抗力的な色彩が強い「天災」である点だ。

 新型コロナショックが人知を超えた「天災」であれば、経済対策が「大盤振る舞い」で行われる方向にどうしても傾きがちとなる。とりわけ同調圧力が強いわが国では、ポピュリズム的な風潮と相まって、歳出増に歯止めがかからない事態が懸念される。

 以上のメリットとデメリットを比較衡量すると、コロナ対策の歳出を内部的に把握することは必要であるにせよ、わざわざ「コロナ国債」を発行してまで分別管理することは、現時点では、むしろ弊害のほうが大きいのではないだろうか。

 ただし、感染症の拡大が長期化し、例えば、極端な話、年間の国家予算と同額のコロナ対策の歳出が恒常的に必要となるようなケースなどでは、国債の年限や、償還方法なども含めて、特殊な配慮が必要になるかもしれない。

 いずれにしても、われわれにとって最も大切なことは、「感染症へのレジリエンスのある(耐性の高い)社会」という大きな資産を次世代に残すことである。

 したがって、新型コロナショックに対応する歳出の中身も、緊急避難的な「痛み止め」に終始するのではなく、感染症の拡大ペースを慎重に見極めながら、「リモート社会(非接触型社会)の実現」といったポストコロナ時代の構造変化を視野に入れたプロアクティブな内容に、徐々にウエイトを移していくべきであろう。

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