2021-04-13

【経産省】LINEの情報管理に不備 利用者の不安は拭えず

対話アプリ大手のLINEは3月中旬、個人情報が利用者に十分な説明がないまま、システム開発を担う中国子会社から一時閲覧できる状態だったと発表した。中国の高度な技術力や人材に頼った形だが、同国は国家情報管理体制を取るだけに、利用者の不安は拭えない。総務省や個人情報保護委員会がLINEに情報管理体制の報告を求める事態となった。

 LINEが国際的にIT事業を展開する上で、アジア広域の人材活用は不可欠。一方で、米国と中国の先端技術分野での覇権争いが激化する中、米中に挟まれた日本で情報保護に関するアピールや対応を誤れば打撃となる可能性がある。

 LINEが中国拠点で同国人社員を活用したのは、IT、AI(人工知能)分野で中国が高度な技術を確立していることが背景にある。投資会社幹部は「AI分野で中国と米国が日本企業を圧倒している」と指摘。
AIを軸にアジア展開を急ぐLINEが中国拠点を活用するのは「グローバル企業としてはやむを得ない」とみる。ただ、中国の政治体制、法では政府が民間企業に情報提供を迫ることが可能とされ、日本では中国拠点などでの情報管理に懸念が強い。

 日本の個人情報保護法は、海外への個人情報移転で利用者の同意を得るよう規定。政府の個人情報保護委は移転先の国名を規約などに記すよう求めている。

 今回の事例では、情報は移転していないものの、中国子会社の専門家に個人情報の閲覧権を付与。利用者向けの規約では「個人データ保護法制を持たない第三国に(個人情報を)移転することがある」などとしつつ、中国と明記していなかった。

 一連の報道などを受け、政府機関や自治体ではLINEの利用を見直す動きが出ている。一方で、「代替可能な国内サービスが育っていない」(経済官庁幹部)ことも事実だ。

 まずは、LINEがデータ管理や活用の範囲を利用者に明確に説明することが不可欠だが、政府や公的セクターも「傍受されて当然のインターネット」(同)をどのように使っていくのかという視点が必要になる。

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