2021-05-11

日本郵船 ・長澤仁志の「打たれても出る杭になれ!」

長澤仁志・日本郵船社長


21年3月期は史上最高益

 環境変化の激しい中で、日本郵船の2021年3月期は売上高1兆5400億円(20年3月期は1兆6683億円)で、経常利益は2000億円(同448億円)、当期利益(純利益)は900億円(同311億円)と大幅な増益になる見通し。

 利益面で見ると、同社が21年3月期決算について、今年2月3日に開示した経常利益の数値は1600億円。それが4月6日に開示の連結業績では2000億円に拡大、20年3月期と比べて4・4倍強の増益である。

 正式には5月10日に業績確定の数値が発表されたが、想定を上回る大幅増益決算で史上最高益となる見通しである。

 日本郵船グループが海外で展開する国数は58カ国・地域。運航する船舶は777隻。従業員数は5万6000人を数える。

 文字どおり、グローバルに活動を展開する立場で、世界経済の現状をどう捉えるのか?

「各国とも、いわゆる財政が大支出をしてくれています。世界中にお金が有り余っているような状態ですね。そういった金回りによって、株価とか、いろいろなモノが上がっていますね。株を持っている人などはある程度売って、モノに変えていく。そういう株高の状況の中で、モノに変わっていって、それがニューヨーク(の株高)につながっていると。そういうことではないか思います」

 世界中で潤沢な資金が流れ、回り回って、「自分たちの物流の世界に良い勢いで来ている」という認識を長澤氏は示す。

 長澤氏が続ける。「この状況がいつまで続くかということ。正直なところ、僕は極めて警戒感を持っています」

 各国とも財政出動をするに当たっては、国債を発行して債務を膨らませている。国の財政を元に戻していかなくてはならず、それには、ある程度の増税などの動きが必ず起こってくる。

「それが経済活動の自然の成り行きですからね。経済活動の成長によっての税増収なんて、なかなか簡単にできないと思いますのでね。財政投融資なども締まってくるかもしれないし、全体に財布のヒモがきつくなる」

 長澤氏は先行きの見通しについて、こう述べ、「それが一挙に来るのか、モデレートなのか、その辺りは分かりませんが、ある程度の反動が来ると思わざるを得ない」という認識を示す。

 現に、英国などで法人税引き上げの動きが出たりしている。「国がもたないですからね。これは、一旦どこかでリセッションみたいな、将来的には何年後か分かりませんが、そういう事が起こる可能性もあるかなと。ただ、世界全体は経済成長していくでしょうから、そのリセッションと成功のところが上手くプラスマイナスで行けば、大きな落ち込みは避けられそうな気もします」

 緊張感をもって、冷静に対応していくときという長澤氏だ。

本誌主幹・村田博文

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