2021-05-11

日本郵船 ・長澤仁志の「打たれても出る杭になれ!」

長澤仁志・日本郵船社長


米中対立の中をどう生き抜く?

 世界約60カ国に拠点を置き、グローバルに総合物流業務を営む日本郵船グループにとって、米中対立も気懸りの1つ。

「はい、世界でモノの流れが滞るような応報主義、あるいはブロック経済的な動きが出てくれば、世界の経済成長に大きな障害となることは間違いないと」

 長澤氏はこう語りながらも、「米国のバイデン大統領はいわゆる人権問題とか安全保障に関わる問題で激しく中国に対して物を言っていますが、経済的な部分ではそれほど激しいことになるのかなという気もします」という認識を示す。

 今後の動向を、総合物流の立場からはどう見ているのか?

「今でも一般消費財でいえば、アジアから北米に向かう内の50〜60%は中国出しですからね」と長澤氏。

 トランプ前政権下で米中対立が先鋭化し、安全保障問題も絡み、グローバル企業の間で〝チャイナ・フリー(中国外し)〟の動きが出始めた。

 海外の生産拠点を中国から、ベトナムやマレーシアなどの東南アジアや他の国へ移す動き。

 それでも、アジア全体から北米に向かう一般消費財の50〜60%は中国出しという大きな流れは変わっていない。この事をどう捉えるか?

「米国にとっても無茶はできないし、それは中国にとっても同じですからね。この2大国間の議論というのは、あくまでも人権であったり、安全保障といった領域に焦点が当たっていて、トランプさんの時のような対立や喧嘩は双方とも望まないんじゃないかという気がしています」

 米中両国とも、互いに貿易相手国として最大国という関係。政治的に対立する要因を抱えて、それを議論しながら、経済関係をどう維持するかという落し所を見つけていくということ。

 例えば、EV(電気自動車)の米テスラが中国にも生産拠点を持ち、中国市場を重視する戦略を展開。中国は多くの留学生を米国の各大学に送り込んでいるという現実。

 政治的には、価値観を共有し民主主義を大切にする日・米・豪・印の〝4カ国連合〟が組まれ、1党独裁の中国と対峙する形は当分続く。波乱要素を常にはらみながら、グローバル経済の流動性をどう担保するかということで、ここは知恵の出しどころだ。


世界の人々の日常生活に必要な消費物資を運ぶ定期船。CO₂の排出削減へ向け、燃料転換に向けての努力が続く。

本誌主幹・村田博文

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