2021-04-26

ホクレン・篠原末治会長が語る【日本の食料自給率問題】 

篠原 末治・ホクレン会長

スマート農業など営農から購買・販売支援まで協同の力で食料自給率向上を!

「コロナ禍で外食産業も厳しく、在庫増加が喫緊の課題。ロスを出さないためにも国内需要を上げることが重要」

 ホクレンは北海道内のJAが出資し、JAの経済事業を目的として設立。2019年4月に設立100年を迎えた。

 道内の農畜産物の集荷・販売、資材供給や技術・情報の提供など生産者の営農支援のほか、北海道ブランドの構築やPR活動による需要開拓も行っている。

 インターネットの登場で、生産した農畜産物を自ら売る生産者も増える中、「選ばれる存在でなければならない。生産者だけではできないことを協同の力で、助け合いながら進むことが求められている」と語る。

 協同の力を象徴するのが国内1の生産量を誇る酪農。ホクレンは船会社と連携して運搬用の船を利用し、生乳の流通・生産振興に加え、牛肉・乳製品の販売、生産者への飼料・資材の供給など様々な役割を担っている。

 コロナ禍は全産業に大きなダメージを与えているが、マスクが代表するように「国産を見直す良い機会にもなった」。

 世界で食糧危機が現実味を帯びる中、日本の食料自給率はわずか38%。政府はこれを45%まで引き上げる目標を掲げるが、目標達成には消費者である国民の意識改革が必要だ。

 自給率約200%の北海道は日本の食料基地だが、日本全体の自給率を上げるには安価な輸入品に頼るのではなく、「食料問題の現状を理解しながら国産品を買うという環境を作っていくことが大事」と話す。

 ホクレンは設立100周年を機にコーポレートメッセージ『つくる人を幸せに、食べる人を笑顔に』を設定。それを伝えるため2本のオリジナルアニメーションを制作。「食卓の牛乳はどう届けられたか」など、流通の過程をわかりやすく伝えている。食料自給率を上げるには、食育などを通じて、食料を取り巻く現状を消費者に伝えることが大切だと考えているからだ。

 トラクターの自動走行システムの運用などスマート農業や海外輸出にも力を入れる。協同の精神で日本の食を支えている。(北川 記)


ホクレン会長 篠原 末治 Shinohara Sueji

1961年北海道士幌町生まれ。帯広農業高校、北海道中央農業学園卒業後、実家で就農。2009年JA士幌町理事に就任。同JA常務、専務を経て、18年代表理事組合長。20年6月ホクレン会長に就任。

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