2021-05-03

【 川上量生・学校法人角川ドワンゴ学園理事】「大事なのは1人でも多くの生徒を自立した社会人にすること」

川上 量生・学校法人角川ドワンゴ学園理事


寄り添うのではなく、自主性を重視

 ─ 引きこもりだった生徒も多いと思いますが、優秀な生徒も多く、表彰などもしているので、プレッシャーを感じる生徒はいませんか?

 川上 優秀な子がいる学校に通っていると思うだけで、あまり取柄のない子たちも「N高を卒業している」「N高に通っている」と言えるようになると思うんです。僕は、それってすごく大事なことだと思っています。

 というのは、通信制高校に通っているほとんどの生徒は、友だちに自分が通っている学校のことを言えないんです。

 今はまだ社会的偏見が存在している世の中ですから、「そうじゃない」ということをN高が世の中に見せることで、通信制高校に通う生徒が自分の通う学校を胸を張って言えるようになることが大事だと思っています。

 ─ 他の高校にはない取り組みとしては、直近、どんなことに力を入れていますか?

 川上 「研究部」というものを今年から始めます。これは、高校生のうちから論文を書いたり、関心のある研究を応援する仕組みです。

 これはN高の枠組みを超えて、全国の高校生でやろうと思っています。

 僕たちがやろうと思っているのは「単純な偏差値で輪切りされているのとは違う軸を作ろう」ということで、高校生のうちから、優秀な大学生や大学院生の人に教えてもらいながら、高校の範囲を超えた勉強をする機会を提供しようと。

 ─ どの学校に所属していても入部できる?

 川上 審査があります。僕らは力を入れている部活動は必ず審査をします。大勢で来られると面倒を見切れないという現実的な理由と、生徒が自分から選んだと自覚してもらうためです。

 参加すると言いながら来ない。また、そのことに何の責任も感じないという生徒ばかりになるのは良くないので、「本当にやりたい」という表明をしてもらって、それを信じられる生徒しか入れませんと。

 ドワンゴがIT企業なのでプログラミングコースに力を入れているんですが、そこの方針でもあるんです。

 プログラミングって、自分で作りたいものがある人でないと伸びない。受け身の生徒って伸びないんです。だから、僕たちはプログラミングコースに入りたいという生徒は面接しています。面接では知識は問わないけれど、「作りたいものはありますか? 」と聞いて、ない生徒は落としているんです。

 本人がやりたいと思うことが一番重要だと思っているので、むりやりやらせて寄り添おうとした瞬間に、受動的な態度になってしまい、本人のためにならないというのが、学校全体の考え方として存在します。


かわかみ・のぶお

1968年愛知県生まれ。91年京都大学工学部卒業後、ソフトウェアジャパン入社。
97年8月ドワンゴを設立、2000年会長に就任。2014年KADOKAWAとの経営統合を経て、
現在はKADOKAWA取締役、ドワンゴ顧問

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