「産後ケア」に取り組む意義 ── 特長的な取り組みとしては、どんなものがありますか。
竹島 当院の産婦人科では産後5日が経つと退院するのが通例だったのですが、一方で退院しても育児不安が強かったり、授乳が軌道に乗らなかったり、家族のサポートがなくて孤立してしまう母親がいました。
しかし、産後ケアがあることで、入院延期にも対応してきましたし、退院後の育児に漠然とした不安を抱える母親に対し、不安を聞き取ったり、授乳や沐浴の指導のほか、育児相談も行っています。内容に応じた支援を提供しているのです。中でも母親の体力回復を希望して少しでも休息をとれるようにしたいといったニーズが多いですね。
産後1カ月くらいまでは、ご両親やご主人のサポートを受けられるかもしれませんが、それ以降になると両親の居住地や父親の仕事の関係で、なかなか継続してサポートを受けることができなくなります。そういったときに母親からの悩みや不安を聞いて解決策などを助言すると。ですから、リピート利用者も少し増えてきたように思います。
── 今後も産後ケアは拡大していく方向になりますか。
竹島 ええ。もっと啓蒙していきたいと思っています。当院の産後ケアには牛久市だけでなく、近隣の10市町村からも利用いただいています。それだけ産後施設が周辺にはあまりないということなのでしょうね。
また、高齢を理由に実家の母親からお金は出すから地元で育ててくださいと言われたお母さんもいらっしゃいました。それだけ時代が変わっているということです。私が産後ケアを始めた理由の1つには、こういった時代背景を受けて、子育てのお手伝いしないと社会が成り立たないという危機感があります。
そして2つ目が先ほど申し上げた通り、「地域を守る」という使命です。地域を守るという意味では、地域包括ケアシステムの確立が求められます。この地域包括ケアシステムは主に医療と介護の融合などから成り立ってくるものです。しかし私はその中には、子供を安心して育てるという要素も入れるべきだと思っているのです。
── そういう視点に立った場合、つくばセントラル病院は高齢者の介護もやるし、未来を創る赤ん坊たちも育てると。
竹島 そうです。地域を守ると言った場合、今は高齢者の命や住まいを守るといった意味合いが強いですが、それだけではありません。出産や子育てといった子供たちを守るということも大事になります。子供を産み、育てるシステムとして環境が整備されていけば、より子供を産みやすい、育てやすい社会になると信じています。
1988年12月1日に個人病院として開業以来、地域の医療を守っている「つくばセントラル病院」
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