2021-05-26

日立次期社長に本命・小島氏 成長エンジン立ち上げの立役者

小島啓二・日立製作所次期社長(左)と東原敏昭社長

「病気を理由に任期半ばで退任せざるを得なくなったことは大変残念であり、一日も早い回復をお祈りしております」

 こう語るのは、日立製作所社長兼CEOの東原敏昭氏(66)。

 日立は5月12日付で病気療養中の会長、中西宏明氏(75)が退任する人事を発表。中西氏は相談役に就き、東原氏が会長を兼務する。また、6月23日の株主総会を経て、東原氏が会長兼CEOに専任、副社長の小島啓二氏(64)が社長兼COOに昇格する。

 近年、ハードウェアからソフトウェアに重心を移している日立。自社のIoT基盤『ルマーダ』を成長エンジンに位置づけ、製造業の強みを生かしつつ、データを駆使した「デジタル製造業」への転換を標榜してきた。

 小島氏は1956年東京都生まれ。82年京都大学大学院理学研究科を修了後、日立に入社。

 本人が「入社以来、一貫して取り組んできたテーマがデータから価値を創ること」と語るように、長くデジタル技術の研究開発に従事。同社が注力するルマーダの立ち上げに関わった他、日立ハイテクノロジーズの完全子会社化や画像診断事業の譲渡などを実行してきた。

「ルマーダ事業に対する深い造詣と構造改革を断行する実行力は、デジタルで成長していく日立の社長として最適だと取締役会が判断した」(東原氏)

 日立は2009年3月期の巨額赤字の計上以降、構造改革に着手。営業利益率10%を視野に入れ、日立国際電気やクラリオンなど主要子会社を手放した。「御三家」と呼ばれた日立化成も売却。同じく「御三家」だった日立金属も米投資ファンドのベインキャピタルなどに約3800億円で売却することを決めた他、米IT大手グローバルロジックを約1兆円で買収するなど、“聖域なき構造改革”は最終章を迎えている。

「日立の使命はデータとテクノロジーをフルに使って社会インフラをどんどん革新して、人々の生活を支えること。東原会長と共に有言実行で会社をつくっていきたい」と語る小島氏。

 DXで先行する海外勢に追いつくためにも、大型買収の成果を生み出し、東原氏が進めてきた改革の果実を摘み取ることが小島氏の課題と言えそうだ。

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