新型コロナウイルスの感染が国内外衰えをみせない中、外務省が「ワクチン外交」に積極的に乗り出している。
象徴的なのが、4月に米製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)が菅義偉首相と電話会談した際、日本向けに同社製ワクチン5000万回分の追加供給を確約しただけでなく、東京五輪・パラリンピックに参加する世界中の選手団にもワクチンを無償提供する方針を示したことだ。
同省幹部は、「在ワシントンの日本大使館と本省の北米局が中心となり、バイデン政権に中国が自国製ワクチンを武器に途上国などに影響力を強めていることなどを丁寧に説明し、ファイザー側に水面下で事実上の指示を出してもらうことにつなげた」と明かす。
ワクチン外交で中国に対抗するという意味では、途上国などに提供する国際枠組み「COVAX」(コバックス)を活用する方針にも力を注ぐ。これは茂木敏充外相が旗振り役となっており、6月初旬にオンラインで開かれる「ワクチンサミット」で、菅首相が7億ドル(約770億円)規模の追加拠出を表明する見通しだ。
ワクチンの確保は河野太郎ワクチン担当相が米国内のファイザー本社と直接交渉を行っている。ただ、茂木氏は外務省内に「うちの省でもやれることがあるはずだ」と強く指示を出しているという。
特にファイザーからの追加供給は、一般国民のワクチン接種を早期に終わらせる切り札になるとして菅首相も喜んだ。
茂木氏は、衆院選や自民党総裁選がある今秋以降の政治的立場も見据え、今のうちに存在感を発揮しようと躍起になっているようだ。