2021-06-01

テクノスジャパン社長・吉岡隆が語る「日本企業のDX改革」



グローバルスタンダードを日本に定着させる



 ―― では、具体的にこれからどんなことに注力していくのか聞かせてもらえますか。

 吉岡 先ほど申し上げたように、ERPのグローバルスタンダードはSAPで、CRMのグローバルスタンダードはセールスフォースです。われわれはこれまで日本にグローバルスタンダードをしっかり定着させようと考えてやってきたわけです。

 ただ、これらはERPとCRMの標準機能だけでは不足しているビジネス領域でクラウドサービスを提供し、それを活用してもらえるようなビジネスにも注力しています。それが当社独自のプラットフォーム『CBP(Tecnos Connected Business Platform)』で、まずは企業取引の一連業務をデジタルスマート化し、業界全体の生産性向上を図ろうということです。

 今後はリアルとデジタルが融合した社会にどんどんなっていきます。例えば、製造業であれば、売り手と買い手が発注してから受注し、出庫してから納品され、お互いに債権債務を計上し、対価を支払い、回収する。

その一連のデータがきちんと連携して売り手の業務と買い手の業務がつながっていく。要するに、売り手側と買い手側で途切れないデジタルデータ連携を目指してCBPというものを訴求していく。

 ―― 従来のビジネスを深掘りして。

 吉岡 ええ。例えば、昨今、DXという言葉をよく聞くと思うんですが、狭義のDXとDX基盤という意味の2つあると思うんですね。

 狭いDXというのは、顧客の囲い込みであるとか、差別化であるとか、他社と横展開するというよりは企業独自の収益モデルを構築することです。一方、当社がやろうとしている世界観は、どちらかというとDX基盤のビジネス。つまり、企業の標準化や自動化、経営・業務の高度化やシンプル化といった、企業内で粛々と高度化したり、業界全体で活用し合うといった領域です。

 ERPの標準機能は企業内の最適化を目指すシステムで、取引先との接点業務は実はあまり強くありません。そこで、当社が提供するCBPは取引先との接点業務で取引先とデータを共通利用できるようにすることでシンプルな業務推進が可能となります。

 ―― シンプルにすることで何が変わるのですか。

 吉岡 取引先に合わせて、同じ業務を異なる方法で作業しなければならないケースが多々あります。データを起点に業務をシンプルにすると、データの分散も無くなり、一連の取引データとして活用できる状態になり、ディマンドチェーン(需要網)とサプライチェーン(供給網)全体を効率化し、業界全体の業務プロセスを最適化することができると考えています。

 ERPというのは、企業の基幹データなので、部門と部門のデータが連動することになります。そうなると、部門間でお互いにコミュニケーションを取らないといけないよねと。

そうやって会社全体で考えた時の無駄をなくし、人と人とのコミュニケーションもできるようになるので、結果として社員一人ひとりが全体最適を考えるようになる。それがERPの良さなのだと思います。

 ―― なるほど。部門と部門をつなぐ。

 吉岡 ええ。ERPやCRMは企業内のデータをつなげることが目的でしたけど、これからはもう一歩踏み込んで、企業とその取引先をつなげていこうと。ESG経営やSDGsに対応していくには、業界全体で最適解を導き出せるようにしようというのが、これからの世界観になるのだと思います。

 ですから、言ってみれば、当社はERP、CRM、CBPを掛け合わせることによって、企業のDXを推進するとともに、ESG経営やSDGsに対応していくICT基盤を提供しているんですね。企業内の業務をERPやCRMによって標準化し、そこにCBPを利用することで付加価値の高いサービスへとつなげようということです。

 デジタルと言っても、デジタル活用のコンサルティングの部分はどうしても人が重要になります。ですから、付加価値を生み出すのは、人とクラウドサービスの両輪でビジネスを展開していくことが大事だと思っています。

 今後はリアルとデジタル、そして大企業と中小企業を橋渡しする役割がますます重要になってきます。われわれがそういう仕組みを提供できるように頑張っていきたいと思います。

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