2021-06-21

【コロナ問題から環境・成長戦略まで】経済同友会・ 櫻田謙悟の新資本主義論 「世界最先端モデルを示せるのは日本の企業人」

櫻田謙悟・経済同友会代表幹事

本来、日本の現場での執行力は高いはずではなかったのか──。自分の国でワクチンを作れない現状で、米ファイザー社製などを調達したものの、接種作業も試行錯誤が続く。「日本はプランニングはするけれども、執行力が弱い」とは経済同友会代表幹事の櫻田謙悟氏。言ってみれば、司令塔不在が随所で目立つ。非常時体制の不備をどう克服するかという課題の中で、経済人の役割とは何か? コロナ危機にあってポストコロナを見据え、「成長は何のためにあるのか」という基本に立ち返っての課題解決が大事。その際、「企業はだれのものか」という議論の中で、「新しい資本主義とは何かというのは正しい観点だと思います」と櫻田氏。例えば、社員に支払う賃金もコストと考えるのではなく、それだけ価値を生んでいるという認識。環境・エネルギー、東京五輪開催など意見が二分される課題が多い中、櫻田同友会が目指す“新しい資本主義”とは──


日本の脆弱性を克服して非常時体制づくりを!

 コロナ危機で今、思うことは何か?  という問いに、「それは思うに、わたし1人ではなく、日本全体に鈍感さがあった、あるいは技術への過信があったんじゃないかと思っています」と経済同友会代表幹事の櫻田謙悟氏は思いを述べる。

 肺炎のパンデミックでは、20世紀に入って、第1次大戦中に発生した『スペイン風邪』(1918)が有名で、死者は5000万人とも1億人ともいわれる。そのあと『アジア風邪』、『香港風邪』が発生。21世紀に入って、SARS、MERSといった呼吸器症候群が起きたが、日本ではそれほど深刻な被害ではなかった。

 今回は100年に1度といわれる位のパンデミックで、日本も東京、大阪、札幌、福岡など大都市を中心に3度目の緊急事態宣言が6月20日まで延長されたばかり。

 この間、最後の頼みのワクチン接種も始まったが、これも米国や英国、イスラエルなどの国と比べると、日本の接種作業は出遅れている。国と地方自治体との連携、あるいは政府・自治体と医療機関との連携がうまく取れているとは言えず、非常時(有事)での統治体制が日本は取れていないという反省や指摘が相次ぐ。

「日本の言ってみれば、課題とか、つまり分かっていたけど、やらなかったこと、先送りですね。そして、まさかそこまでという脆弱性、いろいろなものが一気に噴き出してきた」

 一言でいうと、日本の非常時、危機時における体制づくりに不備があるということ。

「政府の危機管理についても、最初は国民の自主的な責任で、というところから始まり、緩い規制から入る。しかも法律の限界があったので、いわゆる緊急事態宣言と言ってもペナルティを科すようなことはできない。その後に法改正にいくわけですが、ロックダウン(都市封鎖)という厳しい措置も取れないが故に感染を抑えきれなかった」

 ただ、欧米や南米、インドなどの感染者数や死者数と比べると日本は確実に少ない。日本や中国、台湾など東アジアは新型コロナウイルスに対する独特の免疫力を一定程度持っているのではないかという『ファクターX』なる見方もある。

「ええ、なぜかファクターXのおかげなのか、あるいは日本国民の衛生観念の高さも要因として挙げられるかもしれません。おかげで犠牲者数そのものは少ない」という現実はあるが、非常時体制づくりがダラダラと来ていることをどうするのかという櫻田氏の問題意識。

 危機管理での脆弱性ということが現れたのが、医療崩壊という現実である。
「医療体制では、日本は世界に冠たるものだとわたし自身も思っていました。実際に東京を見ても、国民1人当たりの病床数、あるいは国民1人当たりの病院施設は世界でもトップクラスだと思います。圧倒的に上のほうにいるのに、なぜ医療崩壊なのだと。何て言うことはない。調べてみると国民1人当たりの医師や看護師とか医療従事者の数は圧倒的に少ないということです」

 国民1000人当たりの医師数で見ると、日本は他の先進国と比べて少なく、OECD(経済協力開発機構)の加盟国35か国中、28位というポジション。ちなみに人口1000人当たりの医師数は、日本は2・5人。ドイツの4・3人、フランスの3・0人、イギリスの3・0人と比べても低い。

 ワクチンを海外から調達して、接種をやろうとしても、医師や看護師などの医療従事者が少なく、〝打ち子〟不足にも直面。

 米国のように、非常時に医師OBを接種への参加を政府が呼びかけ、それにOBたちが応ずるといった政府と国民の連携プレーが取れていない。日本はどうすべきか?

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本誌主幹・村田博文

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