2020-12-18

みずほ銀行・藤原弘治頭取が語る「銀行業務デジタル化」の課題

藤原弘治・みずほ銀行頭取



東京・丸の内に銀・信・証の新拠点

 2020年9月30日、みずほ銀行前本店ビル(旧日本興業銀行本店)、銀行会館、東京銀行協会ビルの跡地に「みずほ丸の内タワー」が竣工した。

 このビルと、みずほFG本社が入る「大手町タワー」に東京・内幸町のみずほ銀行、呉服橋のみずほ信託銀行、御茶ノ水のみずほ証券の機能を集約。

 みずほ丸の内タワーのオフィスは基本的にフリーアドレスで、他部門と協働できるスペースや、外部との新たな触れ合いを創出するスペースを用意。

「今は、自ら新しい働き方をデザインする時代。我々は時間、空間、方法の選択肢を提示して、社員1人ひとりが働き方を選び、それが働き甲斐につながっていくことを目指している」

 日本ではコロナ前から「働き方改革」が叫ばれてきたが、コロナ禍で在宅勤務が浸透するなど、変化が訪れている。そんな中、みずほFGは12月にも、従業員組合との協議を前提に銀行、信託、証券で働く約4万5000人の一部に「週休3~4日制」を導入すべく検討していることを明らかにした。

「私自身も働きながら資格を取った経験があるが、週休3~4日になれば、時間をかけて資格のための勉強もできるようになるだろうし、自己啓発に勤しむこともできる。また、家族と協力しながら育児、介護を行うなど自分達のライフスタイルを創ることができる」

 さらに、12月からは銀・信・証の本社で働く約1万2000人のうち、25%を在宅勤務前提の働き方に切り替えていく。

 ただ、この「週休3~4日制」では、週休3日で従来の8割、4日で同6割まで給与が減るため、「コスト削減策ではないか? 」との声もある。これに対して藤原氏は「コスト削減を目的に提案しているものではない。だからこそ、希望者のみを対象としている」と否定。

 藤原氏自身の経験にも照らして「外の息吹を感じることが非常に重要」と話す。銀行の中だけの世界しか知らない人材ではなく、世の中の動き、顧客の考えに思いを致せるような人材を育てることが「次世代金融への転換」に向けて必要だと強調。「銀行は『人』が最も大事な財産であり、サービスの源泉。人を育て、組織を鍛えることにこだわっていきたい」

転換期に発足した金融グループ

 2020年9月29日、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が統合した「みずほホールディングス」が発足して20年となった。

 藤原氏は20年の感想を「挑戦し、困難を克服してきた歴史で、支えてくださったお客様、お取引先に感謝の気持ちでいっぱい。この気持ちは決して忘れてはいけないし、これからの20年、しっかり恩返しをしていかなくてはいけない」と話す。

 1990年代終わりはバブル崩壊、大手金融機関の破綻など金融危機に直面する一方、「金融ビッグバン」など自由化も進む転換期だった。みずほ発足時には「金融システムを安定させながら経済を活性化させたい」、「真に国民から信頼される金融グループを創りたい」という思いがあったと振り返る。

 当時、藤原氏は統合の事務局に身を置き、「プレスリリースの原稿を下書きした」。最終的に違う文章にはなったが、今も自分が書いた内容を鮮明に覚えているという。

 今後に向けては「グループ力を結集し、『課題解決のベストパートナー』になる。私はみずほほど、課題解決のための機能を持つ金融グループはないと思っている」と藤原氏。

 ここまでは前述のシステム障害、旧3行の融合の遅れ、収益力など課題も多かったが、懸案のシステムで他メガより一歩前進。デジタル化の波を捉え、ソリューションを提供できるか。

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