2021-06-28

DX化が進む中、創業90年余の特殊ガラスメーカー・岡本硝子はどう生き残る?

岡本 毅・岡本硝子会長兼社長

改めてリアルや対面の重要性を再確認できた



 ―― この1年間、コロナ禍でいろいろな気づきがあったかと思いますが、このコロナ禍の感想を聞かせてもらえますか。

 岡本 コロナ禍で大きく変わったことの一つは、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速したこと。これはコロナ前から進んでいたものが、コロナで一気に加速しました。

もう一つは従来、当たり前と思っていた会社の習慣や価値観が大きく変わったこと。つまり、オンライン会議に代表されるように、遠隔や非接触を前提とした会議や販売が増えてきました。

 要するに、デジタル化の加速と生活様式の変化という二つなのですが、こうした変化が進めば進むほど、改めてリアルの会議や対面販売の重要性を再認識できたことが一番大きかったと思います。

 ―― その場合、リアルの重要性というのは何ですか。

 岡本 やはり、WEBでは分かりにくい、ちょっとした表情の違いだとか、生の声の調子の重要性です。

 当社では3年ほど前からERP(基幹系統情報システム)の導入を進めてきましたが、今回のコロナ禍においても生産管理システム等の分野でデジタル化が間に合いましたが、一方で、大手企業と異なり、モノづくりの現場においては、まだまだDX化の途上です。AI(人工知能)等を活用した製造現場でのDX化促進は今後の課題だと思います。

 ―― 岡本硝子の場合、世界シェア86%のプロジェクター用反射鏡など、世界トップシェアの製品があるわけですが、このコロナ禍での業績面での影響は出ていますか。

 岡本 おかげさまで、われわれはプロジェクター用反射鏡の他、世界シェア61%のプロジェクター用レンズアレイ、世界シェア72%の歯科医用デンタルミラーという3つの商品で世界シェア1位を確保しています。

 ところが、昨年4月から12月にかけては前年同期と比べて売り上げが急減しました。特にプロジェクターの需要は、WEB会議が浸透してリアルの会議を行う機会が減少したなどの事情で急減し、その結果、プロジェクター用反射鏡や同レンズアレイは販売数量が半減しました。

 最終製品としてのプロジェクターの販売状況をみますと、国内では5%弱で、残りの95%強は海外での販売です。海外と一口に言っても地域により異なり、中国は戻ってきましたが、ヨーロッパやASEAN、それから北米・南米は戻りが遅かったということで、年が明けるまでは苦労しました。

 ―― 需要は戻りつつあるということですね。

 岡本 ええ。ようやく戻りつつあるのですが、完全に戻るのは難しいと思っています。コロナの前からプロジェクターの需要がFPD(液晶テレビ)に置き換わる傾向がありましたので、その準備を進めていたのですが、突然コロナが来てしまったということで、対応が間に合いませんでした。

 ―― なるほど。中国は戻ってきたということですが、米中対立が長期化する中、全体の売り上げの中で中国はどれくらいのウェイトを占めるのですか。

 岡本 最終製品でいくと中国は3割くらいですね。さらに、中国企業に対する米国政府の制裁措置等が続いていますので、当社にとっても米中対立の影響は、プロジェクター以外の分野でも生じております。

 例えば、もともとは5G(次世代通信規格)通信の基地局等に当社の製品(5G通信基板用のグリーンシート)が使われる予定でしたが、米中貿易戦争によって中国企業は部品が手に入らなくなったということで、将来的な需要も含めて、かなりブレーキがかかっている状態です。


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