2021-07-06

【なぜ、日本は非常時対応が鈍いのか?】三菱総研理事長・小宮山 宏の「有事への対応は『自律 ・分散・協調』体制で」

 2千数百の病院が加盟する日本病院会会長の相澤孝夫氏(1947年生まれ、東京慈恵会医科大学卒)は長野県松本市を拠点にする相澤病院の最高経営責任者(社会医療法人財団慈泉会理事長)。

 松本市と塩尻市、安曇野市など3市5村の人口は約43万人。人口約24万人の松本市が中核となって、広域の〝第2次医療圏〟を形成。この松本医療圏は、信州大学医学部附属病院や安曇野赤十字病院などの公的病院と相澤病院など民間病院との連携がうまくいき、コロナ危機でも機敏に対応。いわゆる『松本モデル』として評価されている医療圏である。

 なぜ、松本医療圏は医療崩壊を防げたのか?

「わたしたちは30年位前から松本医療圏の中で、救急医療と災害医療について皆で話し合ってきました。救急医療災害対策委員会を作り、医療圏にある各病院が委員会のメンバーとなって、来年度の救急医療の体制をどうしていくとか話し合ってきたのです。各病院の医師や看護師、事務員などにも参加してもらい、各病院で起こった事例や困った事例を発表していく。この医療圏では、こういう事象についてはこう対応しようということもきめ細かく決めてきました」と相澤氏は語る。

 つまり、日頃から、有事に備える体制を作り、実践してきたということ。救急医療だから、患者の搬送を担う広域消防局からも委員会に参加してもらい、医療チームと救急車の連携も図ってきた。もちろん、地方自治体の責任者も加わっての連携である。

 各病院の強みや弱みについても認識を共有し、搬送する場合でも、「この病院にはこういう患者さんを頼めばいいということが分かってきた」と相澤氏は言う。今回のコロナ危機では相澤氏らは昨年2月にパンデミックになるという情報が入るや、保健所や行政にも参加してもらい、協議を重ね、昨年4月に『松本医療圏新型コロナウイルス感染症入院病床調整計画』をつくり上げている。

 松本モデルの特徴は、レベルによって病院の参加を増やし、ベッドを増やしていったこと。「最初から何床と決めてしまうと、非常に非効率になってしまうからです。重症と最重症を分けたり、疑似症患者さんをどうするか、あるいは発熱外来をどうしていくか。また、透析の患者さんについても役割を決めていました」と相澤氏。

 松本市は信州大学医学部が本拠を置く所でもある。「自治体も大学も病院も医師会も、皆が一緒になって考え、準備を進めてきたことが大きい」と相澤氏は語る。松本市のような知恵と実行力をどう掘り起こしていくか?

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本誌主幹・村田博文

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