2021-07-01

日本最大級のエレクトロニクス商社が生きる道とは? 答える人 塚本勲・加賀電子会長

塚本 勲・加賀電子会長

この1年でかなり働き方が変わってきた



 ―― 加賀電子は前期(2021年3月期)業績が、営業利益、経常利益とも2期連続で最高益となりました。コロナ禍で経済環境は厳しかったと思うのですが、増益になった要因は何だと考えますか。 

 塚本 前半は世界的にロックダウン(都市封鎖)が広がったり、製造業も工場を一時停止したりして、厳しい状況が続きました。しかし、今は徐々に製造業の需要が回復していますし、国内でも企業のテレワーク(在宅勤務)や学校のオンライン授業向けにパソコンやタブレット端末の需要が伸びました。

 また、当社の業績面で大きかったのは間接費の減少です。当社では今、社員の7~8割がテレワークを実施しています。営業に行くにもお客様もテレワークをしているから、社内の会議もお客様との商談も今はほとんどがWEB会議です。

 そういった意味では、この1年で、かなり働き方というのは変わってきましたね。

 ―― コロナは本当に企業や個人の生き方、働き方を大きく変えましたね。

 塚本 ええ。当社では社員の交通費も定期券を止めまして、会社に来た分や実際に使った分だけ実費で支払うと。夜の会合もなくなりましたし、交際費は減る、交通費は減る、出張費も減るということで、ものすごい経費削減につながりました。

 もともと21億円を予定していた間接費は7億円で終わりましたので、14億円の経費削減になりました。だから、その分は社員に少しでも報いたいと考えまして、期末の臨時ボーナスを支給しましたし、毎月3千円を在宅勤務手当として支給しようと。それで先日、昨年4月から1年間分をさかのぼって、社員に支給したところです。

 ―― ところで、今、世界では半導体不足が続いていますよね。半導体不足が世界の自動車メーカーの生産計画にも影響を及ぼしているということで、加賀電子にも当然、半導体の引き合いは多いと思うんですが、この辺の現状はどう認識していますか。

 塚本 ようやく自動車の生産も回復してきたかなと思っていたのですが、足元の半導体不足はかなり深刻です。米中問題で中国は半導体を海外から調達できなくなるということで、今、ものすごい勢いで国内投資を進めています。ですから、半導体製造装置メーカーは大変な受注を抱えています。

 ところが、残念なことに日本の半導体メーカーは昔と違って元気が無くなってきました。わたしは今いろいろなところで申し上げているのですが、最近になって、経済産業省が台湾の半導体受託生産世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)を日本へ誘致しようとしていますよね。でも、わたし個人の意見としては、海外から優秀な企業を誘致するよりも、まずは日本製の半導体を育てることが大事なのではないかと思うんです。



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