2021-07-01

日本最大級のエレクトロニクス商社が生きる道とは? 答える人 塚本勲・加賀電子会長

塚本 勲・加賀電子会長


新たな半導体材料を住友金属鉱山と共同開発



 ―― 本当ですね。国としての基本戦略が問われている。

 塚本 半導体の設計やデザインを行う会社は日本にもあるわけで、当社は富士通エレクトロニクス(現・加賀FEI)を子会社化したからよく知っているんですが、例えば、富士通とパナソニックの半導体事業を統合したソシオネクストは、回路線幅が3㌨や5㌨(㌨は10億分の1)㍍の半導体をデザインできる力があるわけです。

 これは電気自動車(EV)や自動運転向けに使われる「SoC(システム・オン・チップ)」と呼ばれる最先端の半導体で、これだけの技術を持った会社はそうはありません。だから、作るところさえあれば、日本でもできるんです。

 その意味では、わたしは国がある程度の資金を援助して、半導体産業というものを考えていってほしいと思っています。

 ―― かつて半導体は産業のコメと言われましたよね。これは今も言えるんですか。

 塚本 もちろんですよ。日本の半導体産業の力が無くなってきたのは、巨額な投資をする余裕がなくなってきたことが原因ですから、ある程度、国が援助してやって、企業には5年か10年で返してもらえばいいと思うんですがね。

 例えば、SoCを作ると言っても、今の中国が作れるのは15㌨くらいなんです。ソシオネクストのように3㌨のような最先端の半導体を作る技術はまだないんですよ。

 ―― なるほど、これは微細化という技術ですか。

 塚本 ええ。半導体というのは、微細化するにつれて、設計が複雑で、高度な技術が必要になります。

 一時期に比べて、日本の半導体メーカーの力が弱くなったとはいえ、メモリーではキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)、マイコンではルネサスエレクトロニクス、CMOSセンサーではソニーと、それぞれの分野ごとに役者は揃っています。

 システムの頭脳を担うCPU(中央演算処理装置)の会社が無いのが残念ですが、いずれにせよ、日本にはまだ優秀な技術がありますから、こうした技術の根を絶やさないためにも、国がある程度、国策として関与してほしいと思います。

 ―― これはいい問題提起ですね。国策として半導体をどう考えるか。もう一度、半導体を日本の手に取り戻せと。

 塚本 これから自動車一つとっても、先ほど申し上げたような自動運転だとか、先進運転支援システム(ADAS)など、特殊な半導体の需要は確実に増えるわけですからね。

 ―― そうなると、加賀電子もそこに絡んでくる?

 塚本 もちろん、われわれも絡まなくてはなりません。実は住友金属鉱山と一緒に「シリコンカーバイド(SiC)基板」の開発を行っています。

EVは電圧の高い半導体が必要になってくるんですが、SiCは電力の制御を行うパワー半導体などに使用される半導体材料として今後の需要拡大が期待されています。

 やはり、時代と共に求められる商品や技術は変わってきますから、われわれもお客様から聞かれたら、そうしたニーズに対応した商品をお届けしなければなりません。その意味では、われわれも世の中の変化に対して、きちんとアンテナを張っていないといけませんね。

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