2021-07-04

【丸和運輸機関社長・和佐見勝】「お客様の困り事を解決するという視点に立って物流のソリューションを!」



大手eコマース事業者のラストワンマイルを受託

 ─ その経験を糧に、大手のeコマース事業者の物流業務も手掛けることになりました。

 和佐見 2000年頃から同社の存在感が高まっていて、私も世界各地にある同社の物流センターを見学して回りました。その中で特に驚いたのが、朝一番で注文すると、2時間後には商品が配達されるという仕組みです。

 そのとき海外で私が参加していた研修会でも午前9時前に注文をすると、研修を行っている最中に商品がデリバリーされてきました。僅か2時間で配達されたのですから、研修内では「すごい」と、皆で拍手したほどです。

 ─ 日本ではそういった仕組みができていませんでした。

 和佐見 そうです。しかも、大手eコマース事業者のサービスでは、どの品物が現在どこにあって、どのくらいの所要時間でお届けしますといった情報も提供していました。つまり、あらゆる荷物に関する情報を追跡できるようになっていたのです。日本にもeコマース事業者はありましたが、ここまでの精度ではありませんでした。

 一方で、海外と同じように日本でもeコマースが広がれば、大手の宅配業者の配送が難しくなるのではないだろうかという予測もありました。というのも、宅配便は配達以外に集荷の業務もありましたから、ドライバーもどちらを優先すべきか判らない。それだけドライバーの負担が重くなると見ていたのです。

 それでもeコマースの荷物はどんどん増える。大手宅配業者の取扱個数が2%程度の伸びだったのに対し、eコマースの取扱個数は20%を超える伸びでした。

 急激に増えた荷物に対し、現場のドライバーの負担が増えたことで労働組合からも「荷物の取扱い個数を制限してほしい」という声があがり、結果として大手の宅配業者はラストワンマイルの当日配送から撤退せざるを得なくなりました。

 ─ その大手eコマース事業者の配達を任されるようになった決め手は何だったのですか。

 和佐見 運送事業者のネットワーク「AZ―COM丸和・支援ネットワーク」(通称:アズコムネット)と個人事業主の独立開業型モデルのMQA(桃太郎クイックエース)というシステムです。中小運送事業者や個人事業主を束ねた組織が強みとしてありました。

 そういった背景から当社に宅配業務の要請が来たのです。ただ、要請の難易度は高いものでした。例えば、そのeコマース事業者が首都圏に配送センターを短期間で50箇所以上作るという計画を打ち出したとき、配送センターや人員の確保を当社が短期間で準備しました。ここで感じたのはスピード感でした。これが違いました。

 ─ 日本ではeコマースが普及し、コロナ禍の巣ごもり需要で更に拡大を続けていますね。

 和佐見 eコマースはこれからも成長していくでしょう。現在の日本のEC化率6・7%(2019年)。中国は約44%(20年)、米国は約14%(20年)。誰が見ても世界のEC化率は今後20%を超えていくと見込まれていますので、日本もまだまだ伸びていくと思います。ですから、この流れを念頭に置いてラストワンマイルの配送体制を整えていこうと思っています。

 加えて、同社の大都市圏にある物流センターを結ぶ幹線輸送の仕事も当社が担っていますし、物流センター内での受注から梱包、在庫管理、発送、受け渡し、代金回収までのフルフィルメント業務の仕事もあります。優良なお客様と取引をしていることで、我々にとってのチャンスにもつながっていくのです。

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