2021-07-09

明治安田生命社長・永島英器の「最後は人間力」論「人とデジタルの融合で営業改革を」

永島英器・明治安田生命保険社長



営業職員の給与体系を変える


 もう一つ、明治安田が主力としている営業職員についても大きな変革が進む。それが営業職員に対して保険の契約実績に応じて支給してきた「販売奨励金」の廃止。これは大手生保で初めてのこと。22年度からは営業職員の報酬を全額固定給とする。

 従来、生保では営業目標を設定し、それをいかに達成したかに応じて販売奨励金を出すなど、給与に差を付けてきた。それをモチベーションとして頑張る営業職員は多かったが、目標達成のために無理な営業をして顧客からのクレームにつながるケースもあり、業界全体の課題となっていた。しかも今はコロナ禍で対面営業が難しい環境。

「今月の成績で来月の給与が左右されるのではなく、1年間の仕事のパフォーマンスで翌年の固定給が決まるという、総合職型のスタイルを志向している。これは大きな変革」

 この改革は永島氏のこだわりが反映されている。かつて自身が営業所長を務めていた時代、営業目標を、複数の営業職員で構成される「班」に下ろすことはしなかったのだという。「1人ひとりが自分の目標や、お客様と接する中で頑張った合計が、営業所の成績だと考えてきた。『自立した個』、1人ひとりを大事にした経営を進めていきたい」(永島氏)

 これは22年度から始まる「次世代アドバイザー制度」の中で実施されるが、まさに「行うは難し」の改革。大事になるのは営業職員の評価方法。定量的部分だけでなく定性的な部分をどう見ていくかが問われる。

 さらに支社長や営業所長など従来、本社からの施策や営業目標を背負ってきた立場の人達の意識改革と同時に、経営陣が彼らをどう評価するかという視点も大事になる。

「本社から来た目標を下ろすだけ、達成に向けて厳しく言うだけではいけない。お客様本位の業務運営をしなければ『生保の常識、社会の非常識』になってしまう可能性もある。不断の努力、働きかけを続けていく」

 また、生保は長期契約の中で、顧客の保険料を運用し、支払いに備えることが大きな柱だが、長期化する低金利環境の中で、運用にも苦心している。

「大きな変化のタイミングではリスク・リターンの歪みが生じやすい。そのタイミングを機動的に捉えて運用することが大事。もう一つは中長期的な成長の場に身を置く、あるいは投資をすること。その意味で海外は重要になる」(永島氏)

 国内のみならず世界の機関投資家が運用で競う今、運用の巧拙が従来以上に問われる。その体制の充実は大きな課題。明治安田では「資産運用『大』改革」を推進中で、人材、体制、ガバナンスを見つめ直している。

 前述のように、永島氏は根岸氏が進めてきた改革の中で、その計画の立案に携わってきており、「(根岸氏との)付き合いも長く、相互会社、営業職員を大事にするといった考え方も共通することが多い。今後、何かを変えるというのではなく、実行フェーズに移そうという思いが強い。覚悟を決めて実行する」と話す。

 まさに永島氏の実行力が問われる局面である。

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