2021-07-11

≪子宮頸がん≫の現状と今後の対策 青木大輔・慶應義塾大学医学部教授

青木 大輔・慶應義塾大学医学部教授

がんに対する戦略や手立てを考えやすい



 ―― 若い女性の間で子宮頸がんの患者が増加しています。まずは読者のために、子宮頸がんとはどんなものであるか聞かせてもらえますか。

 青木 子宮頸がんとは、女性特有の臓器である子宮の下部にある管状の部分(子宮頸部という)にできるがんのことです。

 特徴は、われわれ「ナチュラル・ヒストリー」とか「自然史」という言葉を使うんですが、human papillomavirus(HPV=ヒトパピローマウイルス)の感染が原因であることが分かっていて、このHPVというウイルスが長期間にわたって持続感染すると発がんします。

 ただ、HPVに感染しても全員ががんになるわけではなく、多くの人は自らの免疫の力によってウイルスが自然に排除されます。つまり、HPVに感染した人の一部が前がん病変、いわゆる、がんになる前の状態となり、5年とか10年といった歳月をかけて、がんに進行していくのです。

 ですから、それぞれの段階の状況がよく知られているがんであり、もちろん、中には例外的なものもありますが、ほとんどがそのライン上に沿って発症する。これが子宮頸がんの大きな特徴だと思います。

 ―― すでに解明されているがんだということですね。

 青木 ええ。国内では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3千人が亡くなっています。しかし、他のがんを考えれば、手立てを打つ方法がなかなか存在しないものもありますが、子宮頸がんはがんに対する戦略というか、手立てを考えやすいと言っていいと思います。

 がんと聞くと、皆さん、どんどん悪い方向に進行していくように考えてしまうかもしれませんが、前がん病変の段階では、がんに近づくより正常の方に戻ることも多く、放っておけば自然治癒することもあります。

 昔は罹患(りかん)のピークが40~50代でしたが、近年は20~30代の女性に増えてきており、ピークは20代後半くらいだと思います。前がん病変はかつて「異形成」と呼ばれていまして、異形成と呼ばれるものは20代後半が罹患のピークで、がんのピークはそこから10年くらいが経った30代後半から40代になります。

 ナチュラル・ヒストリーという観点からすると、それだけがんになるまでは時間がかかるものであり、それぞれのステップで対策を打つことができる。もちろん、早く見つけて作戦を取るにこしたことはありません。

 初期のがん、ちょっと進んでしまった場合のがん、かなり進行した時のがんというのは、それぞれの段階で個々の治療戦略がありますから、手術療法をはじめとして、放射線療法や抗がん剤による化学療法など、いわゆる集約的治療法をうまく組み合わせるということになると思います。


Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事