2021-07-22

過去最大『2兆円』の買収を決断 【セブン&アイ】井阪隆一に問われる覚悟

井阪 隆一氏



鈴木氏の持論が今こそ問われている時はない



 セブンーイレブン・ジャパン社長だった井阪氏が、HDの社長になったのは2016年5月。この時、“日本のコンビニ生みの親”と呼ばれた前会長(現在は名誉顧問)の鈴木敏文氏が電撃退任し、それまでのトップダウン経営から集団指導体制にカジを切った。

 ただ、グループの経営を支えてきたコンビニも創業から40年余が経ち、環境の変化に直面。

 慢性的な人手不足や24時間営業の見直しなど、フランチャイズチェーン(FC)加盟店と本部の対立が表面化したり、決済アプリ『セブンペイ』で、セキュリティ対策の不備から不正利用も起こった。そこに来て昨年来のコロナで都心部の店舗は休業を余儀なくされたりするなど、20年度の既存店売上は前年比97・6%。コンビニを取り巻く環境は大きく変化している。

 変化に対応する者が生き残るという鉄則はいつの時代も変わらないが、「時代の変化に対応せよ」という鈴木氏の持論が今こそ問われている時はない。

「今までもVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)な時代と呼ばれていたが、今回のパンデミックにより産業構造の変化が生じ、ますます変化のスピードが激しくなってきた。コロナは個社ごとに対応できるものではなく、グループでシナジーを出していかなければ十分に対応できない。セブン単独ではなく、グループ全体で品揃え強化、サービスの強化を図りたい」と語る井阪氏。

 成長が見込める海外市場を攻めるのは当然だが、同社の屋台骨を支える国内市場がグラついては元も子もない。そのためのグループ連携によるシナジー効果をいかに発揮していくか。海外にしろ、国内にしろ、社長就任6年目に入った井阪氏に問われるのは、計画の実行力と覚悟である。

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