2021-07-21

クレディセゾン・林野宏会長CEO「カード会社から『総合生活サービス企業グループ』への転換を成し遂げていく」

林野宏・クレディセゾン会長CEO



カード会社からの転換を


 ── クレディセゾンをどういう姿にしていこうと?

 林野 意識としては「第2の創業」です。そのコンセプトは、これまでのカード会社、ファイナンス会社から、「グループ一体となった総合生活サービス企業グループへの転換」です。

 我々の社名になっている「セゾン」は、特にシニア層に浸透しています。こうしたシニア層の土地や家、介護といった「困り事」を解決する生活インフラを提供する企業になっていきます。こうしたシニア・富裕層に加えて中小企業経営者や女性といった層がターゲットになります。

 ── ライバルと言える企業はどこになりますか。

 林野 今の我々の競合相手と言えるのは、実は楽天さんなんですが、ポイントサービスを生かして顧客を獲得しています。

 一方、当社は、基幹システムの開発で長年にわたり苦労しました。既存のシステムではもうもたないということで更新を決めましたが、クレジットカードのシステムは非常に難しく、各社が苦労をしています。

 我々も例外ではなく、18年の完成までに10年かかりました。この間、新しいビジネスを手掛けにくくなったわけですが、昨年から開発期間に計画してきた新たな商品・サービスを実現させています。

 本来であれば、米国のように一つのシステムをどの企業も使うという形になればよかったのですが、日本は残念ながらそういう形にはならず、個別対応になってしまった。

 ただ、楽天さん以外に強敵と言える企業はありませんから、そこで我々がどういう手を打つかが問われます。

 ── 具体的にどういう戦略をとりますか。

 林野 当社に対して多くの方が持っているイメージは「セゾン=アメックス」です。このイメージ、ステータスを活用していこうと考えています。

 例えば「ワンランク上の女性」をイメージしたピンク色の「セゾンローズゴールド・アメリカン・エキスプレスⓇ・カード」を発行しましたが、日本初の月会費制など独自の特典を提供しました。

 また、1990年代中盤以降に生まれた「Z世代」など若年層も開拓していきます。この層をコアターゲットとしたコンセプトカード「Like me♡by saison card」も発行しています。

 今まで我々は流通業と組んで、ハウスカード(発行会社または同社と提携する店舗やサービスのみで使えるようにしたクレジットカード)を中心に展開してきましたが、リアルが落ちて、EC(電子商取引)などバーチャルビジネスが中心になっている時代に、その戦略では立ち行かなくなります。

 ── ほぼ全サービス産業を対象にする形になりますか。

 林野 ええ。重視するのは「B」、つまり法人需要です。個人事業主などスモールビジネス、さらに中小企業経営者をターゲットにビジネスを構築していく。

 そして競合である楽天さんはデジタルオリエンテッドな企業ですが、我々はリアルからスタートした企業。ですから、いかにリアルとデジタルを融合させ、その戦略の違いをお客様に伝えていくかが課題です。

新規事業を立ち上げ若手に経験を


 ── サイバーエージェントとも提携していますね。どういったことも取り組もうと?

 林野 例えば、サイバーエージェントさんは、グループ内にどんどん会社を立ち上げて、若手に社長を任せて、失敗も含めて経験させている。我々も若い人達にどんどん新しいことを経験してもらうために、100社ほど会社を立ち上げたいと考えています。そのために合弁、M&A(企業の合併・買収)などあらゆる手段を使って、新規事業を生み出していきたい。

 ── 新規事業は、有望なものが出てきていますか。

 林野 キーワードは「イノベーション」、「デジタル」、「グローバル」の3つです。実現するのは難しいですが、やり遂げなければなりません。まさにこれからですが、例えば21年5月には、医師コミュニティサイトなどを運営するメドピアさんと、今秋にも在宅医療領域における共同事業を始めることを決めました。

 そして、新しいビジネスを創っていくのは社員です。彼がそれを自分事として考えて、全社員が経営者になるという覚悟を持って取り組んでもらいたいと思っています。そういう会社になることができれば勝ち抜くことができます。

 ── 社員の意識を変えることも必要になりますね。

 林野 先程挙げたキーワードのうち、「デジタル」、「グローバル」は、日本の学校を卒業して、日本の企業で育った人は非常に苦手です。そこで今、期待しているのはデジタルの素養を持った中途入社の人達です。

 入社の段階で、ある程度力量がわかりますし、入社当初は社内に味方がいませんから甘えない。自分が仕事をして、周りに認めさせるしかないという覚悟があります。

 ただ、企業ではロイヤリティも大事ですから、それを補完するのが定時採用です。上手にダイバーシティ(多様性)を生かして組み合わせていくことが大事だと考えています。

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