2021-08-04

【赤字転落から3年で再浮上】RIZAPグループ・瀬戸健の「人は変われる」経営哲学

瀬戸健・RIZAPグループ社長


M&Aで社内がバラバラに

「進むべき方向の意思決定をしなければいけなかったが、正直1年くらい遅れてしまった。18年からの1〜2年はM&Aの推進でいろんなカルチャーを持った幹部がいて、方向性を共有できずバラバラになってしまった」

この数年を振り返り、瀬戸氏はこう反省の弁を述べる。

「赤字を出した後はさらにバラバラになった。もともと統制がとれていない中で赤字を出し、方向感を失ったところがあった」

 その中で「われわれのカルチャーや方向感を出していき、合う合わないということで、正直、辞める方もたくさんいました。ただ、1〜2年経つと徐々に価値観の共有ができ、方向性も統一できてきた」と話す。

 RIZAPグループの事業は多岐にわたる。

 事業セグメントは『RIZAP』や補正用下着、美容・健康食品関連などの「ヘルスケア・美容」。エンタメ商品の小売り、リユース事業の店舗運営、インテリアやアパレルの企画開発製造などを行う「ライフスタイル」。そして、投資事業や再建を要する事業を管理する「インベストメント」の3つ。

 幅広い事業を手掛けるのには、創業者・瀬戸氏の思いが反映している。瀬戸氏は、高校卒業後、大学生に彼女をとられた経験から、日雇い労働の生活から一念発起して明治大学に入学。また大学時代のバイトで「教養がない」と言われると、苦手だった読書を克服するなど「人は変われる」という原体験を持っている。

 RIZAPグループも「提供するのは必需品ではない。でも、あることで自分の人生に意味を見出せたり、自分を好きになれたりする。そんな“自己実現”の領域を成長させていきたい。自己実現はダイエットだったり、仕事だったり、ゴルフだったり、カードゲームだったり」と多様。そこに対応するための多角化だ。

 グループシナジーの創出は“クロスセル”がわかりやすい例だが、「業績の厳しい会社をグループに入れている。ブランドや商品が支持されていない状態でRIZAPの店舗にジーンズメイトの商品を置いても『売りつけられた』となってしまう。商品開発やブランド開発にかなりの予算を付けている。まず魅力的な商品が必要であって、その順番を守らなければいけない」と商品力の強化を重視。

 急成長から再建と会社の状況は変化したが、一貫するのは「企業理念である『人は変われる』を証明すること。自分を愛せて、自分の人生に意味を持てるような商品、サービスを提供したい。だからこそ、あらゆる事業も結果にコミットしなければいけない。プロフェッショナルとして、社会の変化に対応し、お客様が求めているものを提供しなければいけない」と語る。

 この数年を振り返っての瀬戸氏の思いは「いろいろあったけれど、楽しいなと」前を向く。

 RIZAPのユニークさは、効率化を求めて事業の絞り込みを進める企業が多い中、多様な価値を提供しようとしている点といえる。これは瀬戸氏が目指す世界観の表われでもある。グループで価値観を共有し、自力で成長する企業として、RIZAPの第二の創業が進む。

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