2021-09-06

ソフトバンクグループが直面する「中国リスク」

中国上海

AI革命の実現には中国への投資が不可欠

「中国政府の動きに反対しているということも、中国の将来性に疑念を抱いていることもないが、新たな規制、新たなルールが始まろうとしているので、もう少し様子を見てみたい。1~2年経てば、新たな秩序ができると思うので、状況がはっきりすれば、投資活動を活発に行う可能性はある」(孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長)

 ソフトバンクグループの2021年4―6月期決算は、純利益が前年同期比39%減の7615億円となった。だが、これは前期、TモバイルUS(旧スプリント)の株式売却利益がなくなった影響で、『ビジョン・ファンド』の利益は82%増の2356億円と好調。

 だが、決算発表で孫氏の表情が冴えなかったのは、7月以降、中国政府によるIT企業への規制が激しくなっているからだ。

 発端は、米市場に上場したばかりの滴出行への審査。その後、中国政府は海外で上場する中国企業に規制を強化する方針を公表。アリババやテンセントなどへも独禁法の観点から規制を強化している。

 ビジョン・ファンドの出資先には中国企業も多く、7月以降の中国企業の株価下落は収益減に直結する。これを受け、ソフトバンクGはビジョン・ファンドなどファンド事業で23%を占めていた中国への投資を、今期の「新たな投資では11%」に抑えている。

 最近、孫氏がよく口にするのが「ソフトバンクGは〝投資家〟ではなく、未来を創る〝資本家〟である」ということ。そして、資本家として「世界のAIベンチャーの1割に出資している」と貢献度を示す。

 だが、ここで悩ましいのが、世界のAI技術をリードするのは米国そして中国ということ。

 AI革命を標榜するソフトバンクGにとって、中国は避けられない投資先であり、「今後も中国のAI技術、ビジネスモデルの革新は続いていくと信じている」と語る。

 時期を見て、中国への活発な投資を再開させたい意向だが、多額の利益に貢献する中国企業の米国上場も困難な中、新たな出口戦略も必要となっている。

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